信頼、らしいです
数を増すだけでなく五月雨の様な勢いで襲い来る円錐。
父様は闘気を剣に纏わせた斬撃で応戦します。
身体機能が向上強化されてる今の父様の動きは超人並です。
まるで英雄叙述詩に出てくる勇者のような速さ。
残像さえ浮かぶような躍動感。
恐ろしい程の剣技の冴え。
しかし先程までと違うのは私達まで狙われていることです。
自然カバーする範囲が広がり、リズムが狂います。
さらには、
「グギャウウウウウウウウウウウ!!」
次々と生まれ父様に襲い来る闇の獣達。
足止めをしようとするのか、重点的に下半身のみを狙ってきます。
円錐と違いスピードはないも、
不規則な動きには個別に対処を要される為、
心身共に負担となるようです。
更に姑息にも時折私達の方に咆哮をあげ威嚇します。
思わず身体を震わせる私。
母様が優しく肩を抱いてくれます。
しかし焦りからか剣筋が乱れる父様。
円錐が僅かにかすり、体勢を崩します。
その隙を逃さず、笑いながら畳み掛けてくるパンドゥール。
一際巨大な影(それは最早巨人といってもいいでしょう)を招くや否や、
ゆっくり嬲るように父様に向かわせます。
父様もその事を理解してるも防戦一方で手が回らないようです。
流石の父様でも、このままでは……
不安になり、皆を振り返ります。
同じような焦燥に駆られたのか、兄様達も母様を見上げます。
母様は私達の肩を強く抱き締めながら、確信を抱く様に言い聞かせます。
「大丈夫……あの人は何があってもわたしたちを守るわ。
だからあなたたちも信じてあげて。
家族を守ると誓った、あの人の勇姿を」
毅然と言い張る母の顔。
聖母の様な神々しさに思わず見蕩れます。
私はこの時の母の顔を……いつまでも忘れた事はありません。
「はあああああああああああああああ!!」
私達の信頼が力となった訳ではないでしょう。
ですが、機会を窺っていた父様がついに反撃に出ます。
防戦しながら練っていた闘気。
森という地理的条件から借り受けた新緑の魔力。
それらを爆発的に収縮させ体内のチャクラで点火、
自らの力へと転化することにより恐ろしい程の瞬発力に変えます。
噂に聞いた<気と魔力の収斂>でしょうか?
前衛職の究極技法にて最終系。
戦闘力を倍増させていく、まさに絶技。
父様の異名であろう<闘刃>……闘気の刃が広く大きく伸びてゆき、
瞬時に円錐と獣達全てを薙ぎ払います。
「るううううううううううううおおおおおおおお!!!」
間髪入れず流星の様に巨人へ向かう父様。
美しい輝線を描き、巨人の頭頂部から下半身までを一刀両断します。
さらには加速された勢いを留める事無く、踵に気を留め込む父様。
大地を掴むと形容される前傾からの突進。
瞬歩と呼ばれる独特の間合いの詰め方。
まるで瞬間移動したような錯覚を覚えた動きの先には
「え?」
突然の事態に茫然とするパンドゥールの身体。
慌てて展開される防壁。
しかし父様は強固な筈のそれを苦も無く斬り捨て、
「ノルファリア練法<雷閃>!」
全体重と闘気を剣先に込めて突き出し、その胸元を貫きました。
刺された事が理解できないようなパンドゥール。
じっと父様と自らの胸元を見下ろします。
「これで……終わりだ」
「ああ、そうだね……見事としかいいようがないよ。
確かに『今は』勝てないな~」
薄く嘲笑うパンドゥール。
刺突の勢いに揺られフードが捲れます。
「きゃあああああああ!!」
「なん……」
「うあ……」
私達は各々悲鳴を洩らします。
何故なら外界に晒し出されたパンドゥールの顔。
元は端正な青年であったろうその容姿は、
半ば腐り、所々から骨が覗いてるのでした。
アクセス増加や評価など、本当にありがとうございます。
本編はユナがメイド喫茶で働くまで、まだ先ですが(タイトル詐欺)
他の馬鹿シリーズでも見てお待ちください。
個人的には魔法少女シリーズが完結したのでお勧めです。




