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それはまるで弾劾者みたいです

 私の驚愕を余所に自己紹介は続きます。

 嫌々ながらも自分の番が来た事にリューンが名乗りを上げます。

 その隣にいるタマモも便乗するようですね。


「リューンだ。

 今はこのような身なりをしているが、これは仮初め。

 幻想種たる幻獣ユニコーン族に所属する。

 そこのユ……アズマイラの傍付きをしている」

「同じくタマモで~す。

 こんな耳してますけど獣人ではありません。

 アズマイラおねーちゃんの妹分として同行させてもらってま~す」


 非人造的な造形を持つ美青年に将来は傾国の美女を窺わせる容貌を持つ狐耳の幼女。

 二人の簡素と云えばあまりに簡素な紹介に憶測が飛び交います。

 本人達は何処吹く風、といった感じですがね。

 しかしガンズ様やイズナさん等、ある程度の力を持つ人達はどうやら気付いたようです。

 二人の持つ霊的な本質<イデア>に。

 その外見からは想像もできない、潜在的に秘める高密度な力。

 伊達や酔狂ではなく、この二人も呼ばれるべくしてこの会議に呼ばれているという事に。

 ……まあ私からすれば可愛い妹分にセクハラチックな相方にしか見えないんですけどね。

 ある意味ノリノリな二人とは対照的に、ネムレスが溜息を零しています。

 そういえば大勢の人達の前で喋るのは苦手とか以前に言ってましたっけ。


「……ネムレス・アノーニュムスだ。

 無論、本名ではない。

 本当の名前は追憶の彼方に置いてきてしまった。

 仕事というか職業は守護者……。

 世界の調和意志たる<琺輪>に仕える者だ。

 30年前にも王宮に訪問したので覚えている者もいるだろう」

「その弟子になります。

 まだ修行中の身ゆえ、名乗る程ではないのでご容赦下さい」


 厳かに告げたネムレスが右手の甲をかざします。

 瞬間、甲に浮かぶ神秘的な紋章。

 それを見た者達はこの世界に生きる者として本能的に理解しました。

 彼の言う事に嘘は無いという事を。

 彼こそが人類(霊長)の代弁者であり守護者である事を。

 心から浮かぶ畏敬の念。

 自然、皆は姿勢を正しその場にて畏まり始めます。

 まるで時代劇の印籠か紋所みたいですね。

 しかしネムレスや兄様の事は噂で聞いていたのは間違いない様で、

 先日のテロで活躍した双璧の弓士達なのか……とか、

 王宮に潜り込んだ虚ろなる幻魔の正体を看破したのは彼だ、とかですね。

 隠そうともしない好奇と追及の眼差しに二人ともどこか居心地が悪そうです。

 そして最後のトリを務めるのは父様。

 沈痛な面持ちで立ち上がると皆へ向け一礼します。


「カルティア・ノルンです。

 元S級パーティ<雷神の右腕>の前衛を務めておりました。

 イズナと一緒に王宮を幾度か窺ったので知ってる方も多いでしょう。

 さて早急な話で申し訳ございませんが、さっそく私から報告に入らせて頂きたいと思います」


 一礼した父様はルシウスを見ます。

 深く頷き続きを促すルシウス。

 進行役の了承を得た父様は一呼吸の後、語り出します。


「皆様も先日の<王都の悪夢>の事は記憶に新しいでしょう。

 多くの方が亡くなられた真に痛ましいテロ事件でございました。

 しかし……そこに違和感を感じはしませんでしたか?

 騒動の規模に対し、あまりに犠牲者が少な過ぎる。

 無論防衛に尽力した者達の力があったのは間違いありません。

 だが……広大な皇都という規模でみれば少なく感じるこの犠牲者の方々も、

 他の地域では恐ろしいほど大規模な虐殺になります。

 こちらはほぼ同時期に起こった大陸各所の虐殺事件を取りまとめたものです。

 中には都市そのものが死滅したものもある為、正式には報告が上がってないものもあります」 

 

 父様は先程チェックした大陸地図を取り出し皆に掲示させます。

 そこに記載されているのは虐殺があった数々の場所。

 目敏い人はそれだけで大よその事を察し始めます。


「犠牲者の血と苦悶によって大陸各所に描かれた魔方陣。

 奴等はこの魔方陣をもって北壁を開放するつもりらしいです」

「北壁……魔族達が封じられた氷に閉ざされし神々の黄昏か!」

「奴等とは何なのだ、カル殿!?」

「その目的はいったい……?」

「決まっているでしょう。

 危険思想に染まった狂気のテロ集団世界蛇<ミズガルズオルム>

 その最終目的は奴等のいう世界の変革……転輪皇の復活による既存概念の書き換え。

 即ち、人間社会の崩壊です」

 


 陰鬱に話す父様の言葉に、皆は声を失い沈黙するのでした。







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