それはまるで反抗者みたいです
ともあれ現実です。
私が色々思案している内に、いつの間にやら自己紹介の番が来ました。
この場にいらっしゃるるガンズ様やイズナさん達の後ですと、どう頑張ってもインパクトに欠けます。
ですが慌てふためくのも恥ずかしいので、礼儀作法系のスキルを総動員し、優雅に立ち上がり流れるように一礼をします。
「御機嫌よう、皆様。
ただいま御紹介に預かりましたアラクネ盟主、アズマイラです。
火急の召集とはいえこのような身なりで御挨拶する御無礼……
どうかお許しください」
楚々たる佇まい。
慇懃無礼にならない嫌味のない態度。
我ながら計算されつくした、完璧な挨拶です(ドヤ顔)
対外用にと、アラクネ幹部達(主にセルムス)にせがまれたこともあり、こっそり練習していた甲斐がありました。
私の言葉に集まった高官達から感嘆が洩れるのを目敏く捉えます。
少なくとも、これで私に対し悪感情を抱く人はそうはいないでしょう(シャープネス長官は除く)。
……外見でなく私という中身の実態を知るルシウスやガンズ様、それにパーティメンバーは苦笑してますけどね!
まあ私が不貞腐れる間にも挨拶は続きます。
「東方イズモ国が<十二聖>ヒムラ・ソウジでござる。
ランスロード大使館の相談役も兼ねているので何度かお会いした方もいらっしゃるでござるな」
「同じく<十二聖>ムツキ・カエデ。
お初にお目に掛かる」
春風駘蕩。
痩身短躯、歳の頃は十代半ばくらい。
伸びた髪を無造作に後ろで縛っている為、華奢な女子の様なソウジ。
一方のカエデさんは秀麗皎潔。
宝塚の女優さんの様に凜とした容貌を持つ30代前後。
なにもかも相対的な二人。
のほほんとしたソウジとキリキリとしたカエデさん達の挨拶に、私の時よりも皆がざわめきます。
「あれが<旋風>と<氷雨>……」
「一騎一軍と呼ばれる十二聖か……」
……何だか噂が先行して凄い事になってません?
まあ確かに凄まじい達人ですけどね、ソウジ達は。
位階が上昇し様々なスキルを駆使する私ですが、絶対の一を持つ二人には届かないでしょうし。
でもそんな一軍を相手に戦えるなんて、ねえ……?
一応気になった私はネムレスに尋ねます。
(ねえねえ、ネムレス)
(……どうした、ユナ?)
(何だかソウジが一騎一軍とか騒がれてますけど……
皆、大袈裟ですよねー
そんな個人で軍と戦える訳ないじゃないですか)
(戦えるぞ)
(ですよねー
戦える訳が……
って! ホントですか!?)
(ホントも何も……
訊いてきた事に対し素直に答えただけだ。
サムライの振るう技巧は琺輪世界<リャルレシス>に数多いる流派種族の中でも上位に入る。
更に諸天契約による真言特性と組み合わせたその戦闘スタイルは対軍レベルにまでに鍛え上げられている。
守護者たる俺でも互角に持ち込めるかどうか……
琺輪の眼鏡に叶うのなら、是非とも同僚にスカウトしたい程だ)
心話で応じ、ネムレスは肩を竦めます。
才能に恵まれず、されど血の滲むような修練を重ねて己を磨いてきたネムレス。
その言葉には複雑なニュアンスが込められているのを私は感じました。
守護者と戦い続けてきたネムレスですが自分の至らなさに歯噛みした事もあったのでしょう。
力が及ばないというのは無慈悲で残酷です。
母様を奪われたあの時に私は心底思い知りました。
だからこそネムレスの心中が察せられます。
あの時あの力があれば、と。
伸ばした手はただ宙を掴むのみ。
でも過去は変えられない。
ならば人は前を向いて生きていくしかないのでしょう。
たとえそれが自己欺瞞に近いと実感しながらも。
しかし二人の隠された力がその域に達していたとは驚きです。
幾度かソウジとは稽古もつけてもらってたのですが、どうにも私は手加減されていたようですね(溜息)
こうして今更ですが、私は改めて十二聖の称号が意味する凄さを思い知らされたのでした。
加筆・誤字訂正しました。




