それはまるで犯罪者みたいです
いつも通り、転移特有の酩酊感。
目の前の風景がぐにゃり、と歪んだ次の瞬間に私達は煌びやかな室内へと転移してました。
相変わらずお金が掛かっていますね~。
多分王宮の一室なのでしょうけど、積み重ねた歳月と金額が内装や調度品に深い味わいを醸し出してます。
こういうのなんていうのでしたっけ?
イワシの頭も信心から?(うーん違うな~)
豪華な室内を前にそんな事を考えていると、
「無事に父と合流できたようだな、ユナ」
「ルシウス様!」
どこか皮肉めいた……でも以前に比べあたたかい眼をしたルシウスが背後の扉から入室してきました。
先程運命石で連絡していたので隣室で待機してたのでしょう。
1週間ぶりとはいえ変わらない天使の様な愛らしさ。
私達の姿を見るとトドメとばかりに優しく微笑みます。
ナニコレ?
ここは極楽ですか?
ルシウニウム(新元素申請中)が枯渇仕掛かっていた私。
思わず理性を忘れ抱き付いちゃいます。
「ただいま戻りました、ルシウス様!」
「う、うむ」
「ああ、もう~☆
久しぶりですぅ♪」
「そ、そうだな」
真っ直ぐ見詰める私の視線に、照れながら目線を外すルシウス。
純情可憐な乙女ですか、貴方は。
しかも口元に手を当て嫌がる素振りを見せながらもまるで誘うような仕草。
更に漂う、フェロモンじみたいい香り。
時折こちらの反応を窺う様にちら見するのも反則です。
あのね、ルシウス……(ハアハア)
お、おねーさんはもう駄目になってしまうのですよ?
あ、あなたがいけないのですよ?
「ああああああああああああああああああ”!!
お肌スベスベ~~~!!
髪の毛サラサラ~~!!
た、堪らないですううううううううう!!」
「あっ……やめぬか、ユナ。
よ、余は……」
「余だって!
可愛いいいいいいいいいい!!」
羞恥に逃れようとする美少年を強引に抑え込み、問答無用に全身を堪能。
天使の輪っかが浮かぶ髪の毛を撫で、
天使のほっぺを心ゆくまで味わい、
天使の反応に一喜一憂する。
……うん、変態ですね(自覚あり)。
こうなったらもう突っ走りましょう!
あの地平線の彼方まで!!
甘美なる暗黒面(欲望に負けたとも言います)に堕ちかけた、
まさにその瞬間――
「いい加減にしろ、ユナ」
「はい、そこまでね」
背後に忍び寄ったネムレスとシャス兄様の師弟コンビによるツッコミが後頭部に炸裂。
私を正気に返してくれます。
「こ、ここは……
私はいったい……そう、闇に心を囚われて!」
「いや、いいからそういう安っぽい設定」
「まったくだ」
「うう”」
「すみません、ルシウス様。
妹が本当にアレで」
「ふ、ふん!
ユナに裏表がないのはよく分かっておる。
先程の行為も好意ゆえの暴走ということもな。
本来なら不敬罪に値するのだろうが……御咎めはなし、だ」
「あ、ありがとうございますうううううううう!!」
涙目になりながら陳謝する私。
あやうく犯罪者になるとこでした。
「いやいや、おねーちゃん。
もう手遅れだってば……」
心の声を呼んだかのように呆れ顔でツッコミを入れてくるタマモ。
いいんですぅ~
未遂とか故意か過失かで、執行猶予が付くか変わるんですぅ~
まあ王族に対する不敬罪はほとんど死罪なんですけどね!(こわっ)
あと何故かムンクの叫びのような表情を浮かべたリューンと父様が滂沱の涙を流してますが完全に無視です。
「まあ改めて……(コホン)
よく無事に戻って来たな、ユナ。
嬉しく思うぞ」
「は、はい。
ただいま戻りました」
「うむ。
ではさっそく始めるとしよう」
「へっ?
何がです?」
「決まっているだろう?」
ルシウスが隣室の扉を開きます。
そこにあるのは巨大な円卓。
さらに座っているのは――
「皆がお前達を待っていたのだ。
さあ聞かせてくれ。
世界の破滅を止めるにはどうすればいい?
父上の指示により、必要といえる者達は全て集めたぞ」
ドヤ顔で振り返るルシウス。
その背後には錚々(そうそう)たるメンバーが勢ぞろいしているのでした。
ユナ、暴走す。




