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それはまるで陪審員みたいです

「……で。

 まずは詳しい話を聞かせて貰える?」

「はい……」


 仁王立ちになった私の前に正座したリューンが悄然と項垂れながら応じます。

 しかし恐るべきはその再生能力です。

 先程まで父様によって映像的には16歳以上推奨な程斬り刻まれていたリューンでしたが……今はまったくの無傷。

 しかも周囲に飛び散ったスプラッタなものすら消え果ててます。

 もはやこうなっては再生ではなく、時間を回帰する様な復元能力といっても過言ではないでしょう。

 精霊界でどのような修行を積んだか知りませんが凄まじいレベルアップです。

 それに優れた癒し手であるリューンが世界蛇強襲に同行してくれるなら、本当に心強いです。

 けどそれはそれ。

 セクハラに対する謝罪と弁明は別なのです(むー)。


「あのタマモとの戦いの後……

 吾はユナ達と別れ、故郷の森に戻った」

「ええ」


 激戦の後、秘儀<御霊遷し>により幻獣としての力をほぼ失ったリューン。

 一角馬の誇りである角が消失していた姿を思い出し痛ましく思います。


「通常に回復を待っていたのならば数十年。

 いや、ヘタをすれば数百年は掛かる。

 それではユナ達の力にはなれぬ」

「リューン……」

「そこで吾は幻獣を束ねる長に頼んだのだ。

 精霊界に程近い近界<幻想郷>での修行を。

 幻想郷は精霊界とは時間の流れが逆転した世界。

 ここでの一年は現実世界での数分にも満たない。

 ならばすぐに復帰できる筈」

「そんな経緯があったのね」

「ああ。

 力の回復は全盛期に比べ8割程だが代わりに修行を積んできた。

 普通幻獣は鍛える事などしないので位階は向上しない。

 ただ今の吾は以前に比べ数段階は上の存在になっている。

 高位位階到達者たるユナならばそれは分かるか?」

「うん。

 何だろう……こう、力の質が変わったみたいな?」

「さすが鋭いな。

 そうだな……水をただぶちまけるのと、望むカタチに圧縮・加工するのでは違うだろう?

 吾は今まで、ただ生まれ持った力を振りかざすだけで戦ってきた。

 しかしそれでは駄目だという事を学んだのだ。

 人は弱い故に鍛え工夫する。

 我も見習う事にしたのだ」

「そっか」

「ただ吾にも誤算があってな。

 予想以上に年月が掛かった事。

 稽古を付けてくれた者が鬼のようなしごきで吾を苛んだ事。

 それだけにユナと再会出来た喜びは一押しだったのだ。

 取り乱したのは本当にすまないと思っている」

「ん。そういうことなら……いいよ。

 リューンだし、許してあげる」

「本当か!」


 ガバっと身を起こすリューン。

 あ、こら。

 そんな体勢で急に動いたら――


「ひゃう!」

「たた……

 ――って!

 をを!

 す、すまぬユナ!

 け、決してワザとやった訳では!」


 慌てて身を起こすリューン。

 何というか、お約束というか。

 私は体勢を崩したリューンに押し倒されてました。

 それにしても……

 先程から疑問に思ってましたが、もしかしてリューンってば。

 余計な技能かスキル(破廉恥誘発系)でも身に着けてきたのでしょうか?

 じゃないと少し信じられない様なミラクルの連発ですよ。


「アレほど痛めつけてやったのに……

 未だ身の程を知らない様だな、害獣」

「ち、違う!

 誤解だ!!」


 喉元に突き付けられた父様の持つ刀の感触。

 リューンは脂汗をかき弁解します。


「故意か偶然か?」

「誓ってワザとではない!

 ユナ、信じてくれ!」

「だ、そうだが……

 陪審員ユナ、判定は?」

「あのね、リューン」

「な、なんだ?」

「私はね、リューンの事を信じてるよ?」

「をを!

 ほれ見ろ。やっぱりユナは吾の味方を」

「でもね……偶然でも起きてしまった事故に対し、知的生命体たる私達は誠実に罪を償わなきゃいけないと思う」

「え”?」

裁判官とうさま有罪ギルティで♪」

「了承した」

「の、のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


 ザシュ!

 ゴシュ!

 鈍いと音と共にまたも沸き立つ血煙と絶叫。

 いいんですかね、神域を汚して。

 まあリューンは幻獣だし大丈夫でしょう。

 何か言われたら高位存在を生贄にとかそういう理由で(うんうん)。

 まあこうして……女性のセクハラはきちんと裁かれたのでした(ちゃんちゃん)。









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