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それはまるで魅了者みたいです

 やたらハイテンションな私達。

 だって打開策があるんですもの。

 絶望的状況下ですけど、希望はまだ残っている。

 そう思うと今まで自分が積み上げて来たものは無駄じゃなかったな~って実感します。

 まあ今は種明かしが先ですね。

 当惑する父様を前に、私はおもむろに防寒具の手首部分を露出。

 そこに巻かれているのは色気のない細身のブレスレットです。

 これが私の運命石の媒介です。

 以前にも軽く説明しましたが、運命石というのは希少貴金属です。

 限定的(同じ運命石を持つ者のみ作動)とはいえ会話や通信・探索等を可能とします。

 汎用性の高い多機能ぶり。

 ようはスマホみたいなものだと思って下さい。

 でもスマホと違いこの運命石の利点は距離に左右されないこと。

 例え大陸の反対側にいようとも<記し>(メールみたいなもの)は届きます。

 よって私が記しを送るのは勿論この人。


『父様達と合流できました、ルシウス様』


 しばしの間の後、返信が来ます。


『それは重畳。

 二人は無事か?』

『はい。

 ただ火急に対処しなくてはならない事案が発生しました』

『そうか。ならばルナを迎えにやらせる。

 魔導測定器は持ってるな?』

『はい。肌身離さず』

『ならばしばし待つがいい。

 転移宝珠で迎えに行かせよう』

『了解です。

 何から何までありがとうございます♪』

『気にするな、ユナ。

 お前には貸しを作っておきたいだけだからな。

 たっぷり貸付けた後、きっちり利子つきで返してもらう。

 その日を今から楽しみにしている』

『ひいいいいいいいΣ(゜□゜(゜□゜*)!?』

『冗談だ』

『はい(涙)』


 通信終わり(めるめる)、と。

 内容を知らない父様達を余所に、今度は小指に嵌めていた指輪を外し、地面へ設置します。

 途端青白い輝きを上げる指輪。

 複雑な儀式魔術が自動的に立ち上がり、緯度や経度等の情報を測定し始めます。

 その様子を上機嫌で見守る私に、父様が尋ねてきます。


「ユナ、いったい何を……?」

「ああ、これですか。

 レムリソン大陸を出る前にルシウス様からお預かりした魔導測定器です」

「測定器?」

「ええ、そうです。

 ランスロード皇家の秘宝たる転移宝珠。

 さすが秘宝だけあって理論上大陸のどこへでも転移できますけど……

 座標の特定に時間が掛かる事、

 それと他の大陸や島国への転移は出来ませんでした。

 父様を探しにホウライまで転移できれば一番だったんですけどね。

 そういえば父様」

「ん?」

「父様は、かの覇王より宝物庫の鍵をルシウス様が借り受けた経緯は御存知ですよね?」

「まあな。

 その場にわたしもいたからな」

「なら話は早いです。その中にある無数の財宝の一つなのです、これは。

 この測定器を使う事によりつがいとなる受信機に位置情報を送信できる……」

「まさか!?」

「はい。

 ちょっと時間が掛かりますけど、これで転移宝珠の効果範囲内に入ります」


 驚く父様にVサインで応じちゃいます。

 これが奥の手という訳ではありませんけど、私の策の一つでした。

 今も述べた通り、万能に近い転移宝珠ですが……その効果範囲はあくまでレムリソン大陸のみ。

 他大陸や島国は範疇に入っていないのです。

 ただそれはあくまで座標が測定出来ないというだけの話。

 転移宝珠の力はこの世界ならおそらくどこでも作用します。

 そこで登場するのがこの測定器です。

 これにより位置情報を示す事により、そこまでの転移を可能とする。

 そうなれば行きは時間が掛かるも帰りは一瞬。

 まさにどこ○もドア状態なのです。


「では……」

「ええ。これからルナさんが迎えに来てくれます」

「そうか……助かる。

 今からレムリソン大陸まで戻れるなら何か手を打てるかもしれない」


 安堵の表情を浮かべる父様。

 張り詰めていたものが消え、従来の柔和な笑顔で私の頭をなでなでします。

 んっ……くすぐったいですってば!(もう)。


「ねえねえ、カル!」

「お、どうしたタマモ?」

「あたしの話は聞かないの!?」

「ああ、すまんすまん。

 ユナの話を聞いたら、つい気が抜けて……」

「ちゃんと聞きなさいよ。

 カルにとっては朗報なんだから」

「ん。何かな?」

「魔族が封じられてるその北壁? だっけ?

 その場所、あたし大よその検討はついてるよ?」

「はああああああああああああああああああっ!?

 ほ、本当かタマモ!?」

「嘘言ってどうするの」

「い、いったいどうして!?」

「あたしが皇都で活躍した経緯は聞いたんじゃないの?」

「ん? ああ。

 でもそれは概要に近い。

 郊外で、ガンズと共にいにしえの巨人達を相手どったとしか……」

「そっか。

 肝心な事が抜けてるじゃない。

 実はね、その時に配下を連れて行ったの」

「配下……?」

「うん!

 あのね……北方地域の妖魔、ほとんど平定しちゃった(てへペロ☆)」


 片目を瞑って舌を出し頭を自分で小突くタマモ。

 ロリロリした美少女であるタマモがやると凄く似合う愛らしさです。

 ですがその話の内容は爆弾級。

 聞いた父様もフリーズしてます。


「えーっと、タマモ?

 平定したというのは……?」

「文字通りだよ。

 随分粋がってる礼儀知らずが多くてさ。

 元妖魔王としてはちょっとお仕置きが必要かな~って。

 うん、おねーさまの為もあるし頑張った」

「頑張り過ぎだ!

 なんでそんなに!?」

「まあいいじゃない。

 一応人族に迷惑を掛けない様には言っておいたよ?

 拳を交えガツンとね。

 上の方奴等はああ見えて結構物分りがいいから。

 頭の悪い連中には上手く伝わらなかったかも、だけど」

「少しは手加減をすべきだと思うが……」


 あまりの想定外に思わず頭を抱える父様。

 けどタマモは屈託のない魅力的な笑顔で応じるのでした。




 更新です。

 クライマックスが近いですね。

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