それはまるで謝罪者みたいです
「前から言ってるだろう!?
私はマリー一筋だと!!」
瞬間移動の様な瞬歩からの高速土下座。
残像さえ残らない流麗な動き。
言動とは裏腹に何という下手な態度。
完璧です、父様。
ただ追随の手は緩めません。
「いや……どうなんでしょう?」
「本当かな~疑惑だな~」
「話せば分かる!
まずは私の話を聞いて――」
顔を上げた父様が訝しげに眼を細めます。
思わず顔を見合わせた私と兄様は同時に気付きます。
あっ、忘れてました。
今の私達は年齢詐称薬の効果もあり10年後の姿をしているのでした。
「シャスに……ユナだな?
声だけでは分からなかったが、その姿は――?」
「さすが父さん。
一応、分かってくれたんだ?」
「仮にも親だ。
自分の子供を見間違える筈がない」
「父様を探しに来るのに一悶着ありまして。
まあ魔術の力みたいなのを借りてこんな姿に」
「そうか……
一瞬、10年くらい経過したのかと思い焦ったよ」
安堵に胸を撫で下ろす父様。
あー……確かに高次元交流はウラシマ効果が怖いですからね。
「そういえば……
アレから何日経ったんだ?」
「一週間くらいですよ。
そんな事より父さん。
先に言わなきゃならない事があるでしょ?」
「兄様の言う通りです、父様。
ほら、皆さんお待ちかねですよ」
「えっ……?
そ、ソウジにカエデ!
ネムレスにタマモまで!
何故ここに!?」
「アンタが行方不明と聞いたから皆を先導してきたんだよ」
「まったく心配かけるな、でござる」
「す、すまない」
「昔からそそっかしいとこがあったもんね」
「弁解に必死で拙者達の姿も見えていなかったようでござるし」
「……弁護のしようがない」
二人掛かりで詰め寄り父様に絡むソウジとカエデさん。
無論本気ではありません。
父様の無事を心から喜んでいるようです。
言葉の端々に込められた想いからそれが窺えます。
信頼し合った者同士の定番、業界用語でいうイジリですね。
「ネムレスと……そしてタマモも。
随分と心配を掛けた様だな。
大変だったろう、東方への道のりは」
「俺はシャスとユナの引率みたいなものだ。
大したことじゃない」
「あたしだってユナおねーさまに付き従って来ただけだし。
べ、別にアンタの事なんかどうでも良かったし!」
父様の感謝の言葉に、肩を竦め応じるネムレスとツンデレ風味のタマモ。
二人とも素直に心配をしたと言えばいいのに。
オトナの世界はフクザツです。
そして最後に――
「カル様……」
「ファル……」
「はい」
「心配を、掛けたな」
「いいえ。
これぐらいは主人に仕えるメイドとして。
何より勇者の介添え人として当然ですわ」
眼と眼で通じ合う二人。
父様は否定してますけど、やっぱりアヤシイな。
「それで父様、オモイカネ様とやらにいったいどんな事を尋ねて来たんですか?
首尾は? 首尾!」
「……何だか荒れてないか、ユナ?」
「別に(つーん)」
「ま、まあいい。
私が今回ホウライまで赴きこうして交神したのは――
他ならぬ世界蛇の動向を探る為だ。
敵を知り己を知れば百戦殆うからず、と昔の賢人も言っている。
奴等の目的を知らなければ対応が出来ないと思ったからだ」
「なるほどな。
それでカル、奴等の目的とは何なのだ?」
「これは琺輪の守護者である貴方にも関わる事だ、ネムレス。
交神によって得られた恐るべき情報の数々。
最終的な奴等の目標――
それは王クラスの魔族<転輪皇>の復活だ」
父様の告げた内容に、私達は声を失い驚愕するのでした。




