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それはまるで点検者みたいです

「さあ、準備はいいかい?」


 軽めの昼食を摂取した後、雪山装備をチェックしてる私達にカエデさんが問い掛けてきます。

 各種装備品がある為、最終点検は各々違います。

 私の場合ですと、紅帝の竜骸の上に二重に着込んだセーター。

 最後に防寒に優れたレレイ革のコートを羽織ってます。

 インナーとしても優秀な古代竜の革鎧ですが保温効果はイマイチです。

 そこで厚手のセーターなどで『首』を守ります。

 首元、手首、足首。

 アイゼンと呼ばれる転落予防の鉤爪がついたブーツもある為、行動力の低下が懸念されます。

 更に背中に背負ったリュックの中には行動食や発火の魔導具等各種。

 遭難した場合に備え各々ビバーク出来る簡易テントまで用意してるのがカエデさんの周到さだと思います。

 根が楽観的な私やソウジと違い、常に最悪を想定し対処法を考えるネムレス的思考なのでしょう。


「はい、大丈夫です」

「こちらも同様だ」

「うん。いけます」

「あたしも~」

「拙者も……って聞いてないでござるな、カエデ」


 カエデさんの問いに私達と同じく答えるソウジでしたが、近寄ってきたカエデさんは完全無視。

 皆の最終的な装備具合を見て回る事に専念してます。

 一生懸命構ってちゃんアピールするべくぴょんぴょんしてるソウジ。

 年上とはいえアレは正直鬱陶しいです、はい。


「よし、いいようだね。

 じゃあ最後の仕上げに、これを皆塗っておくれ」


 カエデさんが渡してきたのは小瓶に入った何かの液体です。

 蓋を開けてみると少し独特の臭気が漂います。


「これは……?」

「ああ、あたしの一族に伝わる秘伝の薬。

 雪山に生息する『ミダンガマの油』を精製したものだよ」

「ガマの油……

 って、え~~~~~カエル!?」

「っと、ユナ。

 あぶないぞ」


 カエデさんの言葉に驚いた私は思わず瓶を取りこぼしそうになります。

 慌ててフォローに入ってきたのはネムレス。

 動揺した私の手ごと瓶を握り落下を防ぎます。


「あ、ありがとう……です」

「気にするな。

 だが少し動揺し過ぎではないかね?」

「だってカエルって……(涙)」

「まったくネムレスの言う通りだよ、ユナ。

 それは貴重な薬なのだから大事に扱っておくれ」

「具体的にどんな効力があるんですか?」

「良い質問だね、シャス。

 この薬はね……驚くかもしれないけど少量を塗布するだけで寒さを暑さに変換する事が出来るんだよ。

 暑さも寒さに変換されるのが難点といえば難点か。

 まあ雪山にアタックするには欠かせないものではあるけどね」

「そんな便利な薬……初めて聞きます」

「トップシークレット?

 ってやつだからね……無理もない。

 この薬が世間に広まったらおまんまの食い上げになっちまうね。

 あたしの一族はこういった雪山を対象にした先導者ガイドなのさ。

 御先祖様がこの薬の精製に成功したからこそ、こういったガイドの仕事で大金を稼げてる。

 ホント、頭が上がらないよ。

 そう言っても……具体的な成分などはあたしも知らないんだけどね」


 苦笑するカエデさん。

 ガマの油というワードに驚いた私でしたが、どうやらこの薬は某猫型ロボットが所有するとこのアベコ○クリームみたいな効能を持つみたいですね。

 雪山への挑戦とは、ある意味寒さとの戦いでもあります。

 この薬があるだけでどれだけ負担が軽減される事でしょう。


「石橋を叩いて壊すぐらいの慎重さが雪山には求められる。

 急な雪崩による崩落

 視界不良による遭難。

 クレバスと呼ばれる氷河に出来た亀裂への滑落。

 何が起きるか分からないからね。

 皆に装備をしっかり整えてもらったのはそれが理由だよ。

 まあさんざん脅したけど、あたしがしっかりナビをするんで大丈夫さ。

 それじゃ……出発するよ!」


「「「はい(了解)」」」

「あの……拙者も準備が出来て……」


 カエデさんの号令に気持ち良く唱和する皆の声。

 こうして私達は霊峰への第一歩へと踏み出すのでした。

 その場に、相手にされない一人の悲しみを残して。

 



 お待たせしました、更新です。

 最近こっちのシリーズは更新が遅め(週一)で申し訳ないです。

 エンディングまで頑張って更新しますのでお付き合い下さい。

 一応あと1/5くらいで終了予定です。

 その代わりといっては何ですが、別シリーズ(異世界召喚デュエリスト)を良ければ応援して下さい。

 世界観はリンクしていて、ユナも名前だけですが出てます^^

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