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選択、らしいです

 ミスティ兄様が指し示す先、地面から伸びあがった蔦により、

 ゴブリン達は次々と束縛されていきます。

 そんなミスティ兄様を止めようと、

 各々武器を手にしたゴブリン達が襲ってきます。

 ですが、


「させません!」

 

 私が兄様の前に立ち相対します。

 充分に練られた闘気を纏ったいまの私は、

 思考加速、身体強化などの恩恵を受けてます。

 技術もなくただ粗末な武器を振り回すゴブリンなど敵ではありません。

 可動域を見切り、最低限の捌きで払いのけてゆきます。

 覚悟を決めたお蔭でしょうか?

 先程までの絶望感は鳴りを潜め、

 訓練の時のような落ち着いた気持ちで動く事が出来ます。

 ありがとう、父様。

 ありがとう、兄様。

 日々の鍛練は無駄ではありませんでした。

 辛かった訓練一つ一つの動作にその理由がある事を認識します。

 例えば闘気で木の葉を打ち落とす訓練。

 何の意味もないように思えたこの技ですが、要は使い方でした。

 襲い来るゴブリンの目や鼻等に飛ばす事により、

 致命的ではないものの、容易に動揺を誘う事が出来ます。

 顔を押さえ苦悶するゴブリン達。

 私は押し飛ばし、足払いで転倒させます。

 無論憂いはありません。

 体勢を崩したゴブリンは再び起き上がろうとする前に


「ぐぎゃ!?」


 シャス兄様の弓矢を受け絶命していくのですから。

 間接的とはいえ命を奪う行為に加担してる事に心が痛みます。

 でもこれは私の選択。

 自分で選んだ以上、後悔はしません。

 それが私が苦しんだ末に出した結論です。

 気が付けば20匹近くいたゴブリン達は全て地に伏していました。

 今になって疲れが出たのか、肩で息をする私。

 膝に手をやり下を向けば、死体から流れる血が水たまりのようになってます。


「うっ……」


 胃から込み上げてくる熱い衝動。

 私は口元を押さえ堪えます。

 覚悟はしてました。

 今の自分は無数の命の犠牲に成り立つ存在だと。

 でも生の感触は凄惨です。

 閉じた瞳から次々と涙が零れます。


「ユナ」

「大丈夫ですか?」


 二人の兄様が私の頭を撫で、あやしてくれます。

 ただそれだけで心が落ち着くのが自覚出来ます。

 ああ、私は汚れました。

 でもこの人達と共になら罪を背負うのも納得できます。

 涙をハンカチで拭い、私は気丈に振る舞います。


「もう大丈夫です」

「ホントか?」

「意識した最初の戦闘ですからね。

 怖さに屈してもいいんですよ?」

「ううん。兄様達がいるから平気です。

 それに……ほら、あの幻獣さんが何か言いたそうにしてます」


 私の視線の先、緩やかに立ち上がった一角馬さんがこちらを見てます。

 大きいです。

 私の倍近い背丈でしょうか。

 雪の様に純白で極上の絨毯の様な毛並み。

 あのモフモフで寝れたら最高でしょう。

 そんな妄想に浸っていた私でしたが、


『危ないところを助けてくれてありがとう。

 まずは礼を言わせてもらおう、人の子達よ』


 脳裏の響く声に驚いちゃいます。

 どうやらこれが噂に聞く念話のようです。

 私達は顔を見合わせ、彼(?)との対話に臨むのでした。





 連続更新第四弾、異世界転生シリーズです。

 魔法少女シリーズは完結したので、タガタメや勇者シリーズと共に

 この法輪世界関連小説をこれからもよろしくお願いします。

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