それはまるで美食家みたいです
「お、美味しいですぅぅぅ~~~~~っ!!」
「ぬはははは、そうかそうか。
アズマイラ……ではなくユナ、だったか?
遠慮せずどんどん食べるが良いぞ!」
歓喜の悲鳴を上げる私に、コンドー……いえ、ムネイチ様はどこぞの王位継承権保有者の様な高笑いと共に応じます。
老獪で堅牢そうに見えたムネイチ様ですが、私達が父様(あ、年齢詐称薬の件は話しました)の子供達である事が判明してからは態度が一変。
その変わり様はまるで孫の突然の来訪を喜ぶ隠居翁みたいです。
本当は交渉の場にする筈だった宴会所をそのまま提供して下さり、用意した御馳走を振る舞ってくれました。
歓声を上げる私達のストレートな反応にも気を良くしてくれたみたいです。
やっぱり兄様の言う通りですね。
異国の地、且つ使節という事で大分思考が固くなっていた気がします。
今回ばかりは兄様の率直さと誠実さを見習わらなくてはと痛感しました。
おっと、少し思考が逸れましたね。
ムネイチ様に礼を告げ、箸を持ち上げます。
私の愛嬌ある感想に老将を連想させる厳つい顔がだらしなく歪むのは正直アレですが、そこはそれ。
何も見なかった振りをし、私は長テーブルに並べられた御馳走の山に舌鼓を打ちます。
しかしホントに素晴らしいですね、これ。
大皿に盛りつけられた鮮魚の御造り。
コク深い味噌で煮込まれた洗い。
新鮮な野菜をふんだんに使った郷土料理の数々など。
どれも単品ですら美味しいのに……
主食となるのは何と炊き立ての御飯!
そう、ご・は・ん(GOHAN)なのです!
(大事な事なので2回言いました)。
これに香り高い汁物と漬物がくるのですからもう最強です。
思わず我を忘れて食事に取り組んじゃいます。
まずは半身で透き通るお刺身を醤油にチョンチョン。
程よく味がついたらそっとワサビを少量乗せます。
こうした方が醤油に混ぜるより断然味と香りが違うからです。
そして極上にブレンドされた刺身をお口にIN。
口内に広がるのは福音のごとき至高の味。
余韻が消えない内にすかさず御飯の支援演奏。
極上のハーモニーを奏でる口内合奏団の交響曲に酔い痴れちゃいます。
だって噛めば噛むほど潤沢な味が染み出てくるだなんて……
ちょっと反則だと思いません?
お蔭で呑み込むタイミングを逸脱しちゃうくらいです。
次に箸を伸ばすのは煮物や懐石料理の数々。
美しく皿上を飾る並びを眼で愛でつつ、ガッツかないように自制しながら切り崩していきます。
ムネイチ様はともかく御付きの人々の目がありますからね。
箸使いに伴い煮汁と共に溢れ出す芳香。
鼻をくすぐる香りを楽しみながらこちらもお口にIN。
濃厚に広がる旨味の触感。
でも互いの持ち味を消し合うのではなく補強・増幅し合う。
これはもう何て言うか反則級の美味しさです。
卓上はまるで宝の山。
終わる事なき至福の世界に、私は戦慄すら込めて身を震わせるのでした。
ユナによる飯テロ回です。
近況報告ですが、仕事が忙しくなってきまして……
更新頻度はなるべく維持しますが、しばらく短めになるかと思います。
どうかこれからも宜しくお願いしいます。




