それはまるで誓約者みたいです
「ここが東方の玄関口<ナルンガセキ>ですか……」
行き交う着物姿の男女。
懐かしい瓦敷きの屋根。
耐火に優れた漆喰が塗られた石造りの倉が港沿いに規則正しく並んでいる。
そこに出入りするのは刀を差したサムライや押し車を引く人足達。
どこか江戸時代を連想させる景観。
情緒感溢れるエキゾチックな雰囲気は、ここが異国の地だという事を私に強く訴えてきます。
大きなトラブルもなく一週間でイズモに到着できたのは本当に幸運でした。
通常なら嵐やら海の妖魔の襲撃やらで大変な航路だからです。
でも自動的に安全な航路を探る魔導帆船の力もあり、むしろ快適な旅だった気がします。
ホント、ルシウスには感謝してもし切れません。
しかし先程から気を取られるのは別の事。
港口に設けられた関所の奥から漂うのは郷愁を駆り立てるお米の焚ける匂い。
転生前親しんだあの味を思い出され、私の胃をチクチク刺激します。
「早く中に入れませんかね~
そろそろ色々限界っぽいんですけど」
「難しいと思うよ、ユナ。
ここイズモは現在鎖国をしている最中。
出入国が認められるのはこの出島に設けられた港だけだし。
様々な手続きに時間が取られるからね」
「シャスの言う通りでござるよ。
ここは唯一、諸外国へ開かれた玄関口。
色々な人材や物だけでなく、厄介事も集う訳でござる。
最近は密輸入や密輸出が多いので気が立ってる所為もある」
「ほう。気になるな。
例えばどんなものが該当するのだ?
俺も結構小道具持ちなのでね」
「そんなに気にしなくても大丈夫でござるよ、ネムレス殿。
ごく常識的な内容でござる。
そうでござるな……
標準的な麻薬全般。
違法目的に使用される魔導具。
禁制の食品や愛玩動物。
どこでどのように出入りするか分からない。
それ故、取り調べが厳しくなるのは仕方ないでござるよ。
特にこの運上所(関所)は輸出入貨物の監督だけでなく税金の徴収や外交事務なども扱うので面倒でござるし」
「なるほどねー」
「他人事ではござらんよ、タマモ殿。
人族以外のお主は特に厳しく審査されやもしれん」
「あ、大丈夫。
そん時は魅了の視線で対応するし。
職員のハートなんてイチコロ☆」
「……そんなに甘くないでござるよ。
ここの職員はそういった対策をしてるし、腕利き揃い。
やれやれ(溜息)。
<十二聖>として権威を振りかざすのは正直好きじゃないのでござるが……
これは拙者が口添えをしなくてはならないでござるな(トホホ)」
項垂れるソウジに皆の同情の眼差しが集います。
雑談しながらも審査を受ける列で待つ私達。
同様に並ぶ商人や異国の大使達も談笑し合い和やかなものです。
まあここは大きな商売や外交のチャンスでもありますからね。
でも私にはしっかりした目的があります。
未だ行方不明のファル姉様。
安否は定かでないも、生存しているのは確定らしいですが……
早く無事を確認したいし、可能なら手助けしたいです。
(ついに着きました。
待ってて下さいね、ファル姉様。
絶対助け出してみせますから……)
先行きの知れぬ未来を案じながらも、私は決意を新たに誓うのでした。
素で娘に忘れ去られている、カルティア・ノルン(33)であった……




