それはまるで弁解者みたいです
「ようやく本題に入れるな」
騒動によるものか、埃に塗れ疲れ顔でソファーへ腰掛ける一同。
疲労回復・精神鎮静の効果があるハーブ香茶の入ったカップを手に、ルシウスが代表をしてしみじみと呟きます。
途端集まる皆の視線。
非難は無いも逆に何か痛い程感じます。
ふ、ふん~だ。
それはそっちも悪いんですからね!
まあ……大人げない私の態度も正直どうかと思いましたけど。
でもこう見えて転生前を含めれば人生経験豊富な私です。
怒ってても仕方ないので、東方の珍しいスイーツ食べ放題で手を打ちました。
え? 安い?
……結構根は単純なんです、はい。
「さて、まずは使節団として東方に赴く上で必要となる身分証と各関係各省に宛てた召喚状だ。
この身分証は皆の身分と人権を保障するだけでなく関所や税関などもフリーパスとなる重要な代物だ。
例えるなら冒険者組合が発行してる冒険者カードに似ているが……
実情はアレよりももっと複雑だ。
各防護・探知・阻害魔術が内包されているしな。
これだけでもかなりの魔導工芸品だが、その真価は別にある。
……そうだな、各権限としてAAAランク相当の待遇を想定してくれ。
よって絶対に紛失しないでほしい。
この中に悪用するような馬鹿はいないが、世の中色々な奴がいるからな」
そう言ってルシウスがテーブルに並べ始めたのはカミツレを模した紋章と高そうな紙に印字で書かれた書類の数々。
紋章はよく見れば精緻な槍と押印が編み込まれたまさに逸品。
使節団に参加する者は特権を受ける為にも、これを胸元など分かりやすい所に飾る事を奨励されるとのこと。
しかしAAAランクの冒険者カード相当とは驚きです。
この広大な世界に3組15人しかいないS級冒険者(父様やガンズ様は現役ではありません)を除けば、一般冒険者の最高峰ともいえるのはAAAなのです。
世間一般に対する周知度もですが、一番凄いのはその身分に伴う様々な権限。
王城以外はフリーパスで通れる利便性。
更にその請け負う仕事の特殊性(一国の命運を賭けるものすらあります)故、官憲などへも顔が効きます。
確かにルシウスの指摘通り、もしこれが盗まれ悪用されたのならば大変な事になるでしょう。
「まあ実際、何か不測の事態があれば……
力の及ぶ範囲で拙者が手助けをするでござるよ?」
不安そうな顔をする私達に春風の様にのほほんと応じるソウジ。
……本当に大丈夫でしょうか?
そんな心配性な私の意を汲み取ったか、ルシウスが深々と頷きます。
「こう見えてソウジは意外と頼りになるぞ。
何せサムライの名誉職である<十二聖>だ。
国中の尊敬を一身に集めるだけでなく、下手な貴族や豪族より発言権がある。
今回の大使館とのやり取りもソウジが仲介に入ってくれてたので段取り良くいったのだ」
「そんなに褒めても何もでないでござる」
「世辞ではない、客観的な評価だ」
苦笑し頬をポリポリと居心地悪そうに掻くソウジに、ルシウスは真顔で応じます。
生まれ持ったその特性故、どちらかといえば人嫌いの傾向であるルシウス。
何故なら彼の父であるユリウス様の様な特殊なケースを除き、隠し事が出来ないからです。
となれば、余程ルシウスの眼鏡に叶う内面に違いありません。
戦闘狂で天然っぽい駄目な所もあります。
けど、私は父様の修行仲間であったというこの(かなり若く見える)おサムライさんを……少し好きになってる自分に気付くのでした。
お待たせしました、更新です。
次回は2日の昼頃に更新予定です。




