表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

279/403

質問となる、ぬぐいくれぬ疑惑っぽいです

 コンコン、という扉をノックする音が廊下に響きます。

 重厚な樫の木を最高級の職人が手塩に掛けたであろう逸品。

 でも通風性と気密性を高める為に中はあえて空洞。

 その有様はまるで今の自分みたい、と私は内心自嘲します。

 見てくればかりで中身がない。

 その事は私自身が一番痛感してます。

 でも今は踏み出さなくてはならない時。

 私は緊張に震える手を握り込み、目を閉ざし述懐します。




 晩餐会を兼ねた夜会から一週間。

 私は再び王城へ訪ねて来ました。

 ネムレスの判別方法によって判明した虚ろなる幻魔騒動もやっとひと段落が着いてきたところです。

 王族が幻魔により成り代わられるという前代未聞の事件。

 周知されればとてつもないスキャンダルになっていたでしょう。

 しかしそこは徹底された箝口令と王国諜報機関の尽力もあり守秘された様です。

 勿論人の口に戸を閉ざす事は出来ず、カエサルの事は民衆に露見してしまいましたが。

 けど……それはあくまでクーデターを企て王位簒奪を狙い失敗したという事に落ち着いたのです。

 仮にも王族とはいえ現状の王位継承者に対する反逆行為は極刑のみ。

 実際に手を下したのはネムレスですが、カエサルはその責を問われ処刑されたという風になったみたいです。

 私も銀狐達を通じてそれとなく風聞を流す事を手伝いました。

 あのテロからまだ一月も経過していない今、これ以上人心を乱すのは得策ではないという判断からです。

 その成果があったのかどうかは定かではありません。

 ただここ数日は街を歩み人々にも笑顔が戻ってきた気がします。

 




 今現在、私はユリウス様の執務室前にいます。

 無論、ここまで徹底された身体チェックやギアスによる誓約がされました。

 今の私はユリウス様に危害を加えた瞬間、瞬時に絶命する仕様になっています。

 それでもこうして赴くのは、どうしても直接お尋ねしたい事があるから。

 しかも可能ならば二人きりで、です。

 これは私の我儘。

 ですがユリウス様は快く引き受けて下さいました。

 その真意は図り知れませんが。

 けど賽は投げられた。

 ならば後は最後まで演じ切るのみ、です。


「入りたまえ。

 鍵は掛けてはいない」

「失礼致します」


 優しく掛けられた声。

 開眼した私は声に応え中へと入ります。

 20畳程の広さの室内には大きい黒檀の机と書類整理用の書架があるのみ。

 質実剛健を地でいくユリウス様らしい内装でした。

 椅子に腰掛けたユリウス様は何やら執筆中です。

 今回の騒動か日々の執務か。

 病床の父の代わりに政務に携わらなくてはならない為、本当にお忙しいのでしょう。

 10分間とはいえこうして面会の時間を割いていただいたのも本当に心苦しく感じます。

 だけどそれとこれは別。

 どうしても確かめなくてはならないのです。

 立ち尽くす私に対し、書類を書く手を止めこちらを見上げるユリウス様。

 少し……御痩せになったでしょうか。

 王代理という激務。

 妾腹とはいえ我が子の反乱と死による心労。

 二重の責め苦がユリウス様を苦しめているのです。

 私は本当にこの事を口にしていいのか躊躇します。


「それで……話とは何だね?」


 いつまでも喋り出さない私を訝ってか、ユリウス様が聞いてきます。

 そうですね。

 踏む込む覚悟を決めたのですから迷う必要はありませんね。


「ユリウス様に……どうしてもお尋ねしたい事があるのです」

「何かな?

 それは貴女ほどの美女が思い詰める程の内容なのかな、アズマイラ殿」

「ええ」

「ふむ。気になるな。

 何でも聞いてくれたまえ。

 応えられるなら答えよう」

「では、一つだけ」

「ああ」

「ユリウス様……貴方は何故……」

「何故?」

「何故……貴方は自分を殺す計画を立てたのですか?」


 私の落とした爆弾級の問いに、

 ユリウス様はどこか面白がるような……

 それでいて今にも泣いてしまいそうな表情で応じるのでした。 



 某死神の様な左右非対称な表情。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ