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剣戟となる、しにんせざる闘争っぽいです

 時は少々遡る。

 カエサルに促されたユリウスは、どこか浮かれた者達が多い夜会の中、明らかに雰囲気が違う者達が集う一角に導かれる。


「これはこれはユリウス様。

 御機嫌麗しゅう」


 心にもない様々な美辞麗句を並べ話し掛けてくる。

 ユリウスは嫌悪の表情を表に出さない様に苦心した。

 何故ならそこにいたのは自らの躍進と他者の失墜を狙って陰謀を巡らす者達。

 俗に云う権力闘争に一喜一憂する宮廷雀らであった。

 多岐に渡り画策するその動きには人心を無視したものが多い。

 今回の地方へ支援派遣する使節団にルシウスが同行したのは、半ば強引に彼等が推し進めたのだ。

 王位継承権1位を持つ自分の失脚を狙って。

 壊滅に到る経緯をルシウスとガンズから聞いているだけに憤りを覚える。

 だがそこで感情的になっては奴等の思う壺。

 幼少期から鍛えた自制心を以って感情をコントロールしたユリウスはにこやかに話し掛ける。


「ああ。お前達も健やかそうで何より」

「これはこれは勿体無い御言葉」

「今宵はお招き頂きありがとうございます」

「しかし此度の夜会は『臭い』ですな~」

「礼儀を弁えぬ下賤な輩が数多おります故」


 会場にいる冒険者らを見てわざとらしく絹のハンカチで鼻を押さえる。

 演劇の様に儀礼掛かったその仕草に内心呆れつつユリウスは応じる。


「彼等は先日の<王都の悪夢>で活躍した者達だ。

 彼等の活躍が無くば、王都民の被害はもっと増大していただろう」

「良いではありませんか。

 幸い此度の襲撃の犠牲は庶民らに留まった模様」

「左様。我等高貴なる貴族に犠牲は出なかったのですから」

「いや、一代貴族のストックホルム男爵が確か亡くなったと聞きましたぞ」

「確か民を救うべく手勢を引いたはいいが、返り討ちにあったらしいですな」

「愚かな。

 せっかくの間引き、静観してればいいものを」

「所詮は下賤の身の上の者。

 考えが至らないのでしょうな」

「違いない」


 囁き合い、何がおかしいのか嘲笑を浮かべる。 

 その様子にユリウスを守る周囲の王室護衛官達も眉を顰めている。

 ストックホルム男爵の事はユリウスも聞いていた。

 政庭に入り込んだ高名な元冒険者。

 今回の王都テロでは誰よりも迅速に動き、私兵を率いて妖魔討伐に加わった。

 彼の不運は6魔将という異形の存在。

 不幸にも魔将に邂逅してしまった彼らは全滅に近い損耗を受けた。

 事の顛末は生き残った数名の兵により伝達されたものの、到底聞き逃せる内容ではない。

 引退したとはいえAAクラスの冒険者が率いるレイドを単独で潰す実力。

 つくづく今の王都に琺輪の守護者らが集っていた幸運を感謝したくなる。

 ……自らの願いとは相対するとしても。

 だがいずれにせよ、多くの冒険者が集うこの場でその様な言動を含む愚行は避けるべきだろう。


「そういった事を口にするものではない。

 彼の活躍により無辜の民が救われたのだ。

 その功労を我等は感謝せねばならん」

「流石はユリウス様。

 まさしく庶民らにとっては救いの皇ですな。

 そういえば民を救うといえば……

 あの鳴物入りで派遣した例の使節団、壊滅したとか?」

「おお、それは恐ろしい。

 いったい何が起こったのでしょう。

 幸いな事に御子息は御無事だった様ですが」

「例のガンズに容疑が掛かってるのでしょう?

 ああ、恐ろしい。

 これだから由緒なき身の上の者は」

「お前たちの進言は有り難いが、心配はいらない。

 その事に関してはこの後、本人達の口から皆に説明を……」


 遠回しに牽制しようとしたユリウスだったが異質な気配を感じ口を噤む。

 それは闘争に身を置く者が放つ数多の気配。

 ここには冒険者が多くいるが、そういった者達とはまた違う異質な気配。

 公認された職業的暴力行為を振るう事を容認されし存在。

 即ち――


「……これはどういう事だ、カエサル?」

「見て分かりませんか、父上?

 まあいわゆる一つの……

 クーデター、といったやつですよ」


 貴族の御婦人や令嬢から上がる絹を裂く様な悲鳴。

 その原因は扉から次々と入室し壁を背に来場者に武器を向ける存在達。

 即ちランスロードが誇る精強な王都の軍隊であった。



 

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