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回想となる、わすれえない過去っぽいです

 切っ掛けは2年前、今頃よりも幾分か早い季節の事でした。

 残暑厳しい秋の晴天。

 私を含む皆はまるで粘液妖魔スライムの様にベンチにダレてました。


「暑いなー」

「暑いですねー」

「暑いわねー」

「暑いですー」


 5歳の私に同調するのは幼年組であるワキヤ君やクーノちゃん、コタチちゃんです。

 何もお手伝いや作業の無い、まるごと休日と云う素晴らしい日でしたが……

 まるで夏に逆行したみたいな炎天下の日差し。

 忌まわしいそれがせっかくの休日に浮かれる私達の遊び心を殺しにきてます。

 今も少しでも涼を得ようと村の中央部にある噴水広場にきたとこですが……

 案の定、同じ事を考えた人達によって良い席は占拠されてました。

 特に多いのが通常なら禁忌の洞窟に探索に赴くであろう冒険者さん達です。

 流石にこの暑さでは鎧を着込んで冒険など出来ないと踏んだのか、探索を中止するか早めに切り上げて集っている様です。

 全員が反省する彫像の様に項垂れてる中、

 活気も勇ましく声が弾むのは屋台の売り手さん達。

 飛ぶように売れている井戸水で冷やしたジュース等に、歓喜の悲鳴が広場に木霊してます。

 騒がしいそんな一角を胡乱げに見てると、


「よっ♪ 何やってんだ、お前ら」


 こんな暑さだというのに、きっちりとケープを纏ったミスティ兄様に声を掛けられました。

 どうやら村外れに住むシャーマンであるミデスさんのところで修行してきた帰りらしいですね。


「……見て分かりませんか?」

「ん? いや、見て分からないから訊いたんだが。

 まるでゾンビの様に虚ろな瞳でベンチに座ってるからな」

「兄様の見てる通りです(はふー)。

 何もする気力が出ないからこうして体力の消耗を押さえてるんです」

「あん? そうなのか」

「マジっす」

「そこの馬鹿と同じ意見です」

「はい……」


 普通ならクーノちゃんの意見にワキヤ君を交え痴話漫才が始まる所でしょう。

 ですが流石にこの暑さの所為か、喋る気力がないみたいです。


「ははん。

 まっ、仕方ないか。

 確かに異常な暑さだもんな」


 しみじみと同情するような兄様の目線。

 あれ? でも……


「兄様はどうしてそんな厚着でも平気なんです?」


 素朴に浮かんだ疑問をぶつけてみます。

 兄様も隠す訳でなく素直に応じてくれました。


「ああ、これな。

 新しく契約した氷精霊の力を借りてるのさ」

「氷精霊?」

「そっ。このケープの中限定で弱冷風を循環させてる。

 まあ俺だけ快適空間、という訳なん」

「兄様!」

「兄ちゃん!」

「お兄様!」

「兄上様!」


 得意げに語る兄様の口上を遮り、皆で取り囲みます。

 燈った希望に瞳をキラキラさせて。


「あん? な、なんだお前ら」

「「「「私(僕・わたし)達にも是非!!」」」


 珍しく慄いた兄様に畳み込む私達。

 ですが兄様は痛ましく顔を歪めながら。


「お前達の気持ちはよ~~~~~~~~~~~~~~~~~く分かった」

「じゃあ!!」

「だがこの魔術は他者に掛けれない。

 いや、掛ける事位は出来るが……残念だが維持ができないから無意味だ。

 森妖精の血が流れるコタチなら、多少は精霊使いの素質はあるだろうし可能性はあるが――でもまだ使いこなすレベルにはいかないだろうな」


 僅かな希望からの絶望。

 なまじ解決手段が示されただけに、余計にどん底です。

 奈落に落ちたような私達を見て取った兄様は憐憫さを棄て、急に快活な笑みを浮かべます。

 

「よし、分かった!

 ならこの俺が何とかしてやる!」

「「「え”?」」」

「要はこのクソ忌々しい暑さを追っ払えばいいんだろ?

 まあ任せとけって」


 ドン! と、某麦わら海賊の様に胸板を叩くミスティ兄様。

 どうしましょう……すっごく不安です。

 皆も「本当に大丈夫?」と心配そうに顔を見合わせてます。


「となれば善は急げ、だ。付いて来い」

「えっ? ちょ、ちょっと兄様ぁ~」


 颯爽と歩き出した兄様の後を追随する一同。

 はたしてどうなっちゃうのでしょうか?





 お気に入り登録ありがとうございます。

 過去話が少し長めになったので2つに分けますね。

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