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対峙<ヴァーサス>5

 光水晶が煌めくクランベール商会地下大空洞。

 総員が撤退を始め、慌ただしいアラクネ本拠地内を2対の影が敵対していた。

 詠唱に入る6魔将ポルテットを守護するべく敵対者へと襲い掛かるのは、召喚されしメグラリウム。

 メグラリウムは下位とはいえ魔族である。

 そのポテンシャルは並みの人間を遥かに凌駕し、恐るべき固有の力を持つ。

 特に厄介なのは精神生命体である魔族を斃すには相応の手段が必要となる事だろう。

 人より位階が高い魔族は物理攻撃を半減させる。

 更に魔族の体組織は強力な再生能力を有するのだ。

 通常なら騎士団一個小隊を以って当たるのが常道といえよう。

 しかしこれには例外が幾つかあった。

 魔族との位階差を限りなく無効化する手段が魔術である。

 これは魔術を施行する際に、高位次元存在とアクセス・リンクする事による恩寵が大きい。

 媒介となる存在にもよるが位階差を干渉・侵食。

 結果、魔力勝負に持ち込む事を可能とする。

 まあ並みの魔術師を超える魔力抵抗値を誇る魔族を魔術戦闘で倒すのは、容易ではないが。

 次は聖別、もしくは特殊付与された武具による攻撃である。

 これは位階の抵抗を受ける事無く魔族の本質を穿つ事が出来る。

 そして最後。

 意外にしてシンプルな手段。

 霊格が自分よりも高い相手に触れ得る唯一の手段。

 それは同質の霊格を持った自らの五体を以って、直接相手の核を打ち砕く事。

 魔族のみならず対高位階存在に置ける必須事項の一つである。

 だからこそメグラリウムは驚愕した。

 水飴の様な身体を硬化させ、槍のごとく貫こうとした瞬間、そのことごとくが弾かれたのを。

 しかもそれが小太りし明らかに機敏さの欠片もなさそうな、人族の手のものによることを。

 実際それは在り得ない様な動きだった。

 まるでコマを飛ばすような早送り。

 異様な加速。


「流石やな、セルムス」

「そうでもない」

「昔取った杵柄ってやつやろ。

 あとどのくらいいける?」

「今ので2キロ。

 限界を考えても、あと30~40」

「ほな、お前さんが倒れる前に決着をつけとうか」


 他者が聞けば謎だらけの会話。

 それはセルムスの固有能力にあった。

 下積みの商人時代。

 冒険者を行っていた時に得たレアスキル<可測する加速>

 それは『体重を対価』に『人ならざる速さ』を得るスキルである。

 脂肪を燃焼しエネルギーと化すといえばいいか。

 ユナの符理解な編成統合によるアクセルに近い速さを得られ、銀狐の時空魔術による意識の分割に近い思考速度をも可能とする。

 攻勢に出ればメグラリウムと互角以上に戦う事が出来るだろう。

 しかし良い事だけではない。

 スキル発動中は恐ろしい勢いでカロリーを消費するのだ。

 この様な機会を想定し、普段から蓄えていたが……備蓄した脂肪を燃やす尽くすまで、猶予は無い。


「よくやった、メグラリウム!

 死ね、クソ虫どもがああああああああああああ!!」


 配下に対する称賛と共に大空洞に響くポルテの絶叫。

 召喚の構成式を矮小化。

 先程の反省を踏まえ、干渉されない規模で展開された召喚陣から放たれるのは黒邪妖精の群れ。

 人体に取り付けば抵抗する間もなく瞬く間に貪り喰らわれるだろう。

 愉悦に歪むポルテの顔。

 愛らしいその顔が、メグラリウム同様に驚き固まる。


「ビーカー」


 そう呟き何かを投じるスカイ。

 次の瞬間、黒雲のごときそれらは地に伏し、苦悶の声を上げ消滅していく。


「……何を、しやがった?」

「はて?」

「てめえええええええええええええええええわっ!

 さっきから、いったいなんなんだよおおおおおおおおおおおおお!!??」

「なんなんやろうな?」


 怒りに地団駄を踏むポルテ。

 そのポルテに見せつけるように眼鏡をクイと上げ、からかうスカイ。

 これで二度目だ。

 さっきは召喚された空間に干渉された。

 だが今度は何だ?

 いったい何をされた?

 奥底の見えないスカイの妙技。

 数多の戦場を潜ったポルテも慎重にならざるをえない。

 睨み合う互いの前衛を余所に、心理戦をぶつけあう二人の後衛。

 こうして地下の魔戦も膠着を迎えようとしていた。







 バックアップ機能がついたみたいですね。

 これからは少し早く更新できそうです。

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