確証となる、おそるべきな耐性っぽいです
先手となるのはバレディヤの攻撃でした。
広げられたインバネスの下から放たれるのは無数の鞭。
闇撫と告げられた触手による多包囲攻勢です。
しかしその攻撃は既に見切ってます。
「甘いです!」
退魔虹箒による薙ぎ払い。
この触手はいわば異界との接点。
召喚媒体であり生体部品であり闇に属するもの。
ならば対抗属性<光>によるものならば苦も無く退けられます!
豪快な斬風。
ですが半分ほど断ち切ったところで箒がピタリと止まってしまいます。
「あれ……?」
「避けろ、馬鹿!」
その隙を逃さず大鋏を掲げるカチュア。
次の瞬間、その姿が消えたかと思うと猛烈な殺気が首筋に叩き付けられます。
(あっ……死んだ……)
覚悟する間もなく訪れる死の予感。
気付いた時には大鋏が私の首を断ち切ろうと刃を広げ――
「させるかよ!」
咄嗟に展開させた兄様の防御術式に弾かれます。
勇気の精霊の対極にある臆病の精霊による身代わり魔術。
どんな攻撃も絶対一回だけ防ぐことが可能と云う驚異の性能。
ただ強大な巨人の一撃も、小石が強く当たった程度のダメージも等しく一回とカウントされるのが難点ですが。
でも使い処を間違わなければ最高のパフォーマンスを得られます。
現在の私の様に。
「助かりました、兄様!」
姿を現した、当惑するカチュアを蹴り飛ばし距離を取る私。
再び兄様と並び立ちます。
「あんまり俺を心配させるなよ、ユナ。
今のはマジでやばかったぞ」
「申し訳ないです」
「まあ可愛い妹を傷付けようとした奴等だ……
それに気になる事もある。
遠慮はいらないよな」
展開していくミスティ兄様の精霊魔術構成。
太陽の様な輝きを伴い、宙を埋め尽くしていくのは召喚された光の精霊です。
薄暗くなり始めた夜空がまるで真昼のごとく照らされます。
キュインキュイン、と。
耳に響く甲高い音。
大気を焼く様なイオン臭。
掲げられた掌の示す先、即ち魔将達目掛け集約されるのはコロナの煌めき。
「まずは小手調べといこうか」
不敵に告げる兄様。
次の瞬間、流星群の様な弧を描き閃光が迸ります。
以前にも視た兄様の業。
あまりの光量に白く埋め尽くされる視界。
聖霊使いの名は伊達ではありません。
これなら流石の魔将とて……
「やりましたね、兄様♪」
明るく告げたのに、何故か兄様に頭をはたかれます。
「あいたっ」
「馬鹿か、お前は」
「む~ひどいですよ!」
「自分でフラグ立てんじゃねえよ。
こういう場面で『やったか』は完全に駄目だろが」
「そ、そうなんですか?」
「英雄叙述詩とか読んでないのか、愚妹?
それを言ったら絶対効かないのがお約束だろう。
まあ俺はシャスに付き合ってよく読んでたからな」
「でもこれだけの攻撃なら……」
「取り敢えず様子見だ、こんなもん。
それに俺の予測が正しければカチュアはともかくバレディヤの奴には……」
やがて輝きの失せた後、
そこには傷一つない二人が薄く笑いながら浮かんでるのでした。
「なっ!?」
「ほらな」
驚愕する私に対し、得心がいったかのように頷く兄様。
まるでこの結果を予期してたみたいです。
「今ので確証した。
薄々推測してたが、あのバレディヤって奴は攻撃耐性を持ってやがる」
「攻撃耐性?」
「具体的に言うと『同じ属性攻撃は通用しない』って事だ」
「そんな!
そんなの無敵じゃないですか!
チートじゃない、ビーターですよ!」
「……お前の言う事はよく分からんが……
まあ、いい。
あいつの相手は俺がやる」
決して目線をは外さぬまま、私に各種の付与魔術を施行していく兄様。
卓越した術師である兄様のエンチャント呪文は凄まじく肉体的なポテンシャルを引き上げます。
更に活性化してる闘気と魔改造された鎧の副効果もあり、まるで今の私は火力発電所の様です。
これなら使えるかもしれません。
紅帝の竜骸……古代竜に秘められた第二段階の力を。
「でも兄様!
あいつに同じ攻撃は効かないんですよ!?
ならば退魔虹箒で対抗構成が出来る私の方が……」
「お前さ、誰を心配してるんだ?」
「え?」
「同じ攻撃が効かない……
ならば全部違う術でぶっぱすればいいんだろ?」
事も無げに言い放つミスティ兄様。
そうでした。
一番身近に一番チートな人がいました、はい。
「聖霊使い……ミリオンテラーの力は伊達じゃねえ。
多彩な上位精霊属性魔術を魅せてやる」
「じゃあ……お任せします。
私はあのカチュアの方を」
「ああ、でも油断するなよ?
あいつの本質はおそらく……」
「はい。私も『分かり』ました。
クリティカルに気を付ければ何とかやり合える筈です」
「そっか……ならば言う事は無い。
全力でいけ、ユナ!」
「はい!」
兄様はバレディヤに、
私はカチュアと相対し再度刃を交え始めるのでした。
某キ〇トさんネタを少し……w




