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焦燥となる、つみあげれし推測っぽいです

「は、派閥というか組織を形成って……

 それはまた、いったいどういう経緯で……」

「はい。詳しく述べさせて頂きますと――

 半日程前より北方地域に置いて妖魔の鎮静化を確認。

 疑問に思った組合の依頼を受けた冒険者が調査に赴くと、

 死告鳥……御存知でしょうか?」

「ええ」


 死告鳥は嘆きの精霊バンシーにも似た妖魔です。

 人語を解し、彷徨える者にあることないことを吹き込むのが厄介な存在です。

 自身はFランク以下の強さしかないのですが、強者の取り巻きみたいな感じで獲物を誘い出し、そのおこぼれに預かろうとする習性があります。


「その死告鳥が告げたそうです。

『これより北方の妖魔は報復以外で人族と争う事を止める。

 人を襲わず、

 人を喰わず、

 人にあだを為さぬ。

 故に人族よ、我等に干渉するな。

 偉大なる妖魔王タマモの名に置いてここに告げん』と」

「あの娘は……」


 北方地域は人だけでなく生き物が生存するのには過酷な土地です。

 極寒気候が作物の育成を妨げますし、それを糧とする動物も数少ない。

 時には妖魔すら狩り、飢えを凌がなければならないほど。

 しかしそれは妖魔の生活圏を脅かす事になり諍いが絶えなくなります。

 例のテロ以降、かなりの犠牲者が出たと報告を受けてました。

 勿論アラクネとして可能な限り支援を行い、最近は何とか食糧事情の改善が見られたところです。

 そんな愚痴を確かにタマモに零した事もありましたが……

 何というか、これはやり過ぎです。

 無論いい意味で、ですが。

 何らかのアプローチをいずれ頼もうとは思ってました。

 けどここまでの成果は正直期待してませんでした。

 ただ、それがタマモに負担と云うか重荷になってなければいいのですけど。

 せっかく余生を得たのですから静かに過ごして欲しいという気もあります。

 正直に言えばあまり目立って表舞台に立たず穏やかな日常を楽しんで欲しい。

 まあ持って生まれた力と気質がそんな生き方を許さないかもしれませんが。


「あと『追伸:こっちが落ち着いたらすぐに合流するからね、おねー様♪』と。誰当ての私信だか知らぬ故、北方地域の冒険者組合は戦々恐々だったらしいのですが……

 ん? どうされました、盟主様?」

「うう”っ……」


 銀狐の齎した情報に私は思わず頭を抱えます。

 うう、頭痛が痛いです(意味が被ってる? ええ、知ってますとも)。

 どんなに凄そうに見えて凄い事をしてもやっぱり本質はタマモでした。

 あの茶目っ気さは生来の性質なんですね、きっと。

 大陸の覇者であった、いにしえの皇もきっと手を焼いた事でしょう。


「仲間の行く末は分かりました。

 迅速な情報収集、大したものです」

「お褒めに預かり恐悦至極でございます」

「では肝心の……ユリウス様達の事は……」

「はい。襲撃を受けた件の館は炎上し、半壊。

 焼け跡から死体は一体も出ず、魔術などによる隠蔽の痕跡も検出されないことから、捜査に当たった近衛騎士団は賊による王族誘拐と断定。

 今その足取りを追っているところです」

「そんな当たり前の事を聞いているのではありません。

 私が知りたいのはもっと深い事です」

「では率直に応じましょう。

 彼等は奴等<ミズガルズオルム>の手に落ちました。

 消息は不明ですが、間違いなく存命でしょう」

「根拠は?」

「死体の運搬は手間が掛かるからです。

 館に死体は一体もない。

 となれば、転移したか他の手段を使ったか。

 絶大な力を誇る王家の秘宝<転移宝珠>とはいえ、その力は確か生きてる存在とその装備品を含む固有空間にのみ干渉可能な筈。

 生体反応の無い物体となったものは転移出来ないからです」

「成程。では、その目的は?」

「その前に盟主様、一つ宜しいでしょうか?」

「何です?」

「タマモの件で少し探らせた事があるのですが……

 実はここ最近、北方地域のみならずレムリソン大陸全体で妖魔の個体数の減少が見られてるのです。

 無論種族が断続するレベルではなく、10分の1ほどでしょうが」

「? それはどういうことです?」

「タマモがこうも容易に北方地域の妖魔らを統率したのはそのカリスマと力もあるでしょう。しかし何より統率すべきリーダー達が不在だったから――とは考えられませんか?」

「貴方もしや――」

「はい。情報屋としての自分の勘が囁くのです。

 奴等<ミズガルズオルム>の6魔将には妖魔を召喚し使役する召魔師もいる。

 急に減り始めた辺境の妖魔。

 何故か復旧されない各地域を結ぶ転移装置。

 前回、何故か王都にのみテロを仕掛けなかった<ミズガルズオルム>たち。

 今回の王族誘拐騒動。

 これらの事を統括し、そこに奴等のふざけたお題目と能書きを演算すると……」

「まさか――」

「はい。奴等の狙いは王都によるテロ。

 しかも妖魔を用いた無差別襲撃になるものではないかと思われます」


 冷たく感情を交えず私に告げる銀狐。

 奇想天外ともいえるその内容。

 通常なら笑い飛ばす様な推測です。

 ですが身近で触れ合った私は知ってます。

 螺旋を描く蛇<ミズガルズオルム>の歪んだ熱意、その圧倒的な狂気を。

 奴等ならやる。

 そう思わせる何かが、私に戦慄を感じせざるを得ませんでした。







 書き足し更新です。

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