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突然となる、うむをいわぬ転送っぽいです

「……ってな訳で、その際は次元紐理論が使える訳だ。

 しかしユナ、これを恒常展開するのにはまた別の契約が……」


 嬉々揚々。

 楽しそうに語り続けるミスティ兄様。

 妹としてそんな兄様を見るのは嬉しいものですが……

 何事にも程度というものがあります。

 疲弊した足の筋肉が硬直してますし、愛想笑いを続けた頬の筋肉もピクピクしてます。

 そういえば忘れてました。

 容姿端麗、頭脳明晰。

 卓越した魔力と才覚を兼ね備え持つ兄様。

 そんな兄様、唯一つの弱点は『魔術オタク』だということ。

 こうなった時の兄様のトークは自分が納得いくまで終わりません。

 かれこれ1時間は経過したでしょうか?

 曖昧な笑みを浮かべて応じていた私でしたが、いい加減限界が近づいた頃――

 ガランコロ~ン♪

 王都にある大聖堂の鐘が高らかに鳴り響きます。


「って、やば。

 もうこんな時間じゃねえか。

 宿舎先の鬼舎監が巡回に来る頃だな。

 あいつを騙し切るのはさすがに難しい。

 っち、今日は戻るとするか。

 引き留めて悪かったな、ユナ」

「いいえ。

 どうぞ気にせずに……ウフフ(遠い目)」

「何だその死んだ魚の様な眼は?

 まあいい。

 俺はちと魔術師協会の宿舎に戻らなきゃならない。

 お前もその格好(まるで暴行されたみたいです)だし、アラクネの本拠地であるクランベール商会とやらに戻るんだろ?」

「あ、はい」

「直接送ってやりたいとこだが今は時間が惜しい……

 転移してやるから有り難く思え」

「い? に、兄様そんな急に!?」

「ほら、頭に場所を思い浮かべろ。

 転移先の情景が正確に思い浮かんでないと、

 最悪地面や石の中、あるいは天空に飛ばされるぞ」

「ちょっ、ちょっと待ってください!」


 軽く印を刻んだ兄様から立ち昇る魔術構成式。

 魔術に詳しくない私が一目見ただけでも分かるくらいの緻密さです。

 転移に関する魔術はかなりの高位技法。

 聖霊使いとして精霊魔術を扱う兄様もそれは一緒の筈です。

 でもまあ色々規格外の兄様ですからそんな事は関係ないのでしょう。

 流石はミスティ兄様、略して『さすにい』とでも呼びましょうか。

 とまあ、あまり馬鹿な事を考えて本当に転移先をしくじっても本末転倒ですね。

 私は慌てて転移先を連想します。

 いつも使用している煉瓦造りに漆喰がなされた瀟洒な建物の内部。

 地下へ続くその一階の片隅にある物置(とされる部屋)ではなく、

 服装も服装なので……今回はアラクネ内部にある自分の執務室を。


「それじゃいくぞ、ユナ。

 今後の連絡は運命石の<記し>(メールみたいなものです)か、

 俺の専属契約精霊である風乙女を貸してやるからそっちを使え」

「ちょっ、兄様!

 精霊って!?

 私、何も聞いてないですぅ!」

「ごちゃごちゃ言うな。

 お前の愚痴より舎監に責められる俺のライフの方が心配だ。

 というわけで。

 サヨナラだ。またな~」


 渦を巻く精霊力。

 魔術構成式により書き換えてられいく空間。

 舗装された地面に浮かぶ、ブラックホールの様な不気味で強大な穴。

 突然の事態に、私は抗う術もなくその穴に吸い込まれちゃいます。


「み、ミスティ兄様の……

 ぶわかあああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 身も蓋もない絶叫を上げながら、

 私は強制的に転移させられたのでした(くすん)。
















 ……まあミスティ兄様との予期せぬ再会は嬉しかったですし、

 助けられた時は正直涙が出ちゃいましたけど……

 幾らなんでもこれはないですよぉ(はあ)。


 WIZのお約束ですね。転移後⇒「石の中にいる!」

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