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把握となる、みちたりたる日々っぽいです

「しかし世の中は広いぞ、ユナ。

 俺も精霊を統べる聖霊使いとしてかなりのもんだと自負してたが……

 学院に入学し、そんな慢心は見事に打ち砕かれたよ。

 流石は神代から続く魔術師養成機関だな」

「兄様をしてそこまで言わせますか?」

「ああ。正確に力量差を見抜くのも生き抜くには大事な資質だ。

 学院で云うなら講師陣<エルダークラス>は間違いなく現状の俺より上だ。

 精霊を扱う力は明らかに俺の方が上手うわてだろうがな。

 だが実践と実戦を経て得た構築力や展開力等を含めると到底及ばない」

「それほどの力を持つ兄様でも……」

「悔しいが事実だしな

 特に自治統制局の魔人を知った後ではそう思う」

「魔人ってまさか……」

「ユナも知ってるか。

 そう、サーフォレム魔導学院自治統制局、局長。

 漆黒の魔人ことアルティマ・レインフィールド。

 今時恥ずかしいくらいの異名だが……

 その名に恥じぬ力を持ってるのは確かだ。

 実際に姿を拝見した訳じゃないのに、局長室から溢れ出る余力の魔力波動だけで推測・把握できる」

「はあ……」


 以前にも述べましたが……

 非営利組織とはいえ非合法な情報収集機関である<アラクネ>を構成するのは、百戦錬磨の商人達です。

 そんな彼等が口を酸っぱくするくらい注意を促す事の数々。

 その中でも上位に値するのが、決して敵にしてはならない組織と人物です。

 例えばそれは、


 ランスロードの王立情報機関<シャープネス>であり、

 東方の退魔用暗殺者育成機関<ナーヤ>であり、

 深淵の森奥に潜む絶園の巫女<テンペリア>であり、

 魔海列島の失われし王国の主<フルガジュイット>などが挙げられます。


 そんな数多い危険組織・人物の中、

 兄様が言うのはまさにその最高峰。

 神代より続くサーフォレム魔導学院史上最高の天才であり、

 全てが導師級魔術師で形成された魔導学院の誇る最大武力である、

 自治統制局の最年少局長就任者。

 王都どころかレムリソン大陸に名を轟かせる傑物というか英傑です。

 その勇名は先代勇者を軽く凌駕しています。


「兄様も……色々大変そうですね」

「入学早々ゴーレム暴走事件や食料庫強奪事件に巻き込まれたしな。

 危うく首謀者扱いされかけたし。

 こんな俺みたいな善人を掴まえて……マジで酷い奴等だと思わないか?」

「いえ、普段の言動や行いを鑑みるに……

 多分正当な評価かと……(ごにょごにょ)」

「あん?」

「いえいえ何でも(あわわ)。

 そ、そういえば魔術師協会の方は如何なのです?」

「あ? う~ん……協会はなー。

 何て言うか円いんだよな」

「円い?」

「うん。こう……可もなく不可もなく、っていう感じか。

 学院に比べ能力が極端に劣ってる訳じゃないんだろうが……

 長所を追究し伸ばす学院に対し、

 短所を自覚し縮める協会の方針がそう思わせるんだろう」

「はあ……」

「でも中には面白い奴もいたぞ」

「そうなんですか?」

「ああ。アメトリ・カンナって俺達交換留学生の指導者的先輩なんだが……

 飽きっぽくて面倒くさがりなとこを除けばその能力は半端ない」

「といいますと?」

「ユナはデュエルマジック、

 もしくはタスクスペルって知ってるか?」

「? いえ」

「これは因を以って果と為す魔術の根底にも関わる技術でな。

 様は同時に効果の違う魔術を発動することだ」

「えーっと……

 それは兄様も行えるのでは?」

「いいや。俺のはあくまで<魔術の拡張>だ。

 効果範囲や威力の増強などな。

 契約精霊を使えば話は違うだろうが……

 あくまで一度に使える魔術は一つのみ。

 けどアメトリは違う」

「え?」

「巧みに韻を踏む事により効果を変質させる。

 詠唱段階で呪文をアナグラムというか重複化していく。

 故に付いた異名が<二重詠唱>。

 これにより同時に違う効果が発動される。

 これは魔術師でないユナには分からないかもしれないが非常に面白いんだぞ。

 1+1が2でなく11になるような感じだ。

 等価交換の原則を無視した魔術の境界ギリギリ、

 魔法の3歩手前の技術だな」


 楽しそうに話す兄様の姿。

 そこにはいつもの超然とした姿はなく、

 好きな事を嬉しそうに語る……ホントどこにでもいる少年の様で。

 私は兄様の魔導学院への入学が決して無駄ではなかったことをじっくりと実感したのでした。




 レインの概要とアメトリの凄さを説明。

 違うシリーズも読んでる方はニヤっとして貰えると嬉しいです。

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