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追及となる、しゃんとせぬ釈明っぽいです

 一言で表すなら、まさに兄様無双。

 久方ぶりにお会いしたミスティ兄様でしたが、

 箍が外れたというか何というか、相変わらずの御無体ぶりでした。

 人外を相手に手玉に取る様は常軌を逸脱してるとしか言えません。

 良識ある一般人(?)としては納得いかない部分も多々あります。

 でもまあ、窮地を救ってもらったのは確かな訳で。

 兄様が駆けつけてくれなければ、間違いなく私はここで死んでいました。

 ん?

 だけどここで根本的な疑問。

 先程は上手く誤魔化されたとはいえ、何でサーフォレム魔導学院に入学した筈の兄様がここにいるのでしょう?

 ちょっと追及してみなくてはなりません。

 私は苦心してドレスの残骸を巻きつけると、一応脅威が去ったとはいえ、油断なく周囲の様子を窺う兄様に感謝の言葉を告げます。


「危ない所を本当にありがとうございました、兄様」

「あん? 気にすんな、ユナ。

 妹を助けるのは兄として当然の役目だろ?」

「ん。ありがとうございます。

 でも……それでもお礼は言わせて下さい。

 あんな窮地は初めてです。

 ミスティ兄様が来てくれなければ、私は確実に殺されていました」

「お前は肝心なとこでミスをするというか、ポカをやらかすからな。

 油断するなよ」


 上目遣いに兄様を見上げていた私.

 ですが、兄様が労わる様に頭を撫でてくれます。

 ……んあ。

 これは気持ちいいですね。

 小さい頃、母様によくやって頂いてましたが……

 年齢詐称薬の効果もあり大人の身体となった今ではまた違った感触です。

 猫がにーにーと喜ぶ理由が分かりました。

 私も目を細め、刹那の快楽に身を委ねます。

 けど大人の身体と言えば。


「そういえば兄様」

「何だ?」

「よくユナって分かりましたね。

 今の私は秘薬の力もあって10年後の姿にしか見えないと思うんですけど」

「この、お馬鹿」

「あいたっ。

 もう……デコピンはしないでください。

 結構痛いんですよ(む~)」

「ああ、手が出るのは俺が悪い。

 でも覚えてないお前も悪い」

「え?」

「だって前にも言ったろう?

 精霊使いは個人の精霊力を<観る>事が出来る。

 まして数多の精霊を従える聖霊と繋がる俺はもっと深い深度まで把握できる。

 ユナを特定する精霊力の感知くらい、余裕だったぞ」

「そういえば……そうでした。

 ではあと一ついいです?」

「またか」

「これで最後です。

 兄様、何でここ(王都)にいるんです?

 しかも都合よく私のピンチに現れるし」

「愛の力だ」

「(ぢ~~~~~)」

「……というのは冗談で、

 実は野暮用で一週間前から王都に来てた。

 これがもう牢獄のごとき厳粛さと退屈な用事で。

 んで暇なんで王都の風精霊を使役し覗き……もとい、

 探索を行ってたら見覚えのある女性がムサイ男に絡まれてるのを発見した。

 人違いなら余計なお世話かもしれないが……

 義を見てせざるは勇無きなり。

 親父の言葉に従い、こうしてデバってきたという訳だ」


 うっそだ~。

 絶対面白そうだから顔出しに来たに決まってますよ、この人。

 だってドヤ顔をしてる唇の端がにやけてますもん。


「まあ深くは追及しませんけど」

「おっ。話が分かるな、ユナ♪」

「ただ野暮用って何です?

 確か魔導学院って長期休暇や課外授業以外は外出禁止な筈では?」

「ああ、それはまあなんつーか……」

「言い辛いことです?」

「ん~一応秘密にしとけよ?」

「はい」

「なら話していいか。

 魔術師協会って分かるだろ、ユナ?」

「あ、はい。

 在野の魔術師達を統べる機関ですよね?」

「そうだ。研究機関の意味合いの強い学院に対し、協会は行政的な権限を持つ。

 両者はその特性上、犬猿の仲と思われがちでな。

 まあ実際そうだったんだが……

 ある事情から、魔導学院と魔術師協会は連携を密に取る事になってな」

「それは……初耳です」

「だろうな。精霊の囁きに通ずる俺でもやっと内情を知ったんだからな。

 いきなり振って湧いた短期留学の真意に」

「短期留学?」

「まあ正確に言うと、人材の交流って感じか。

 個々の交遊を通じ、有事に備えるみたいな。

 今回もその一環でさ、王都の魔術師協会本部へスクーリングで来てたんだよ。

 向こう(魔導学院)で入学早々、結構やらかしたせいか……

 何故か選抜を命じられてたからな」


 それって多分、絶対悪さしたか厄介払いされたと思います。

 でも正面切っては超絶な力を持つ兄様を批難しづらいでしょうしね。

 自信満々で語る兄様に対し、私は溜息を押さえ切れませんでした(はあ)。



 加筆です。

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