驚愕となる、あきれかえる特性っぽいです
王都へ転移する前、
そしてここへ強制転移された後に私が打った打開策。
それはスマホっぽい機能を持つ運命石による銀狐への連絡でした。
他の都市ならいざ知らず、王都は仮にも我がアラクネの本拠地。
私があまり関与してないとはいえ、組織が持つアドバンテージを活用しないのは愚の誇張。そして何より、組織や銀狐の持つ力はこういった不測の事態に大いに役立つからです。
予期出来ない不慮の事態で転移されたというのに、銀狐はこんなにも迅速に駆け付けてくれまました。
正直に言えば凄く嬉しいです。
でもまずは内心を隠し、上に立つ者としてガツンと言わねばなりません。
横暴そうな物言いと態度だと思われるでしょうが、組織運営の為には色々面倒な手続きなのです(うんうん)。
「ギリギリセーフ……
といったところですね。
貴方ならもっと迅速に迎えに来れたのではなくて?」
「御無理をおっしゃる。
まあそこが盟主様らしいといえばらしいですが」
「何か言いたそうですね」
「いえ、別に。
ただ当初の合流予定では王都近郊ではなかったかと。
こんな辺境まで飛ばされて焦りましたよ」
「それはそうですが、貴方なら……
貴方の能力なら問題ないのでしょう?」
「買い被り過ぎです。
自分の能力にそんな利便性はありませんよ」
「銀狐、私は貴方を買ってます。
ならば配下として、その信頼には応じなさい」
「おやおや。これは手厳しい。
流石は我等が盟主様といったところでしょうか」
冷たく言い放った私の言葉に、銀狐は歩みを進めながら肩を竦めます。
並び立ち前を見据え、そして自らを象徴する狐の仮面を外します。
露わになる銀狐の面差し。
銀髪に怜悧で知的な容貌。
しかしその両眼窩から頬に掛け、自らの指で強引に引き裂いた傷跡が痛ましく残っているのが見て取れました。
あれは消えない私の悔恨。
彼の家族を完全には救えなかった私の後悔すべき過去。
「「「GAAAAAAAAAAAAA!!」」」
突如現れた銀狐を警戒したのか、襲うのを躊躇していた大鬼達。
だがその正体がただの青年だと分かるや否や、蛮声を上げ突進して来ます。
ですがそれは無謀の極みとでも例えるべきでしょう。
仮にもこの銀狐という男は、
私と組織の連絡役のみならず、警護役をも兼ねる実力者なのですから。
「盟主様の御前だ。
無礼が過ぎるぞ、下郎共」
狐の面がドロリ溶融し、鋭いナニカへと姿を変えていきます。
そして振りかざされる一撃。
宙を奔るただその一撃で前列にいた大鬼達の首が飛びます。
屈強な筋肉を物ともせずに。
いえ……銀狐の持つ能力の特性を考えた場合、如何なる防御も理論上は無効となるのです。
思わずたたらを踏み後退し威嚇の唸り声を上げる大鬼達。
手頃な獲物の予期せぬ反抗に対し驚愕してます。
「相変わらず冴え渡ってますね」
「自分にはこれしかありませんから」
「よく言ったものです。
この広大な琺輪世界で貴方だけが持つ固有能力……
時空魔術を所持しておきながら」
「盟主様が考えられるほど勝手が利くものではないのですがね」
呆れたような私の指摘に、
銀狐は人を喰ったような皮肉げな笑みを浮かべ応じるのでした。
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