自戒となる、うきあがりし愚行っぽいです
明滅する視界。
転移特有の不快感を強引に振り切り、着地。
突発の事態に対し戦闘モードへ移行した思考の下、周囲をすぐさまサーチへ。
取り敢えず害意を及ぼす存在が無い事に安堵。
依然警戒を解かぬまま、油断なく辺りを窺います。
「ここは……」
思わず呆然とする私。
先程までいた王都近郊の別荘ではなく、見知らぬ異境の森にいることが分かりました。
鬱蒼と茂る枝葉から垣間見える太陽の位置や群生する植物から判断するに、王都から大分南の方へと飛ばされた様ですが。
どうやら各自別々に飛ばされた様で、視える範囲で他の人はいないみたいです。
しかしそれにしても……
「やられましたね……」
湧き上がる悔しさに拳を握ります。
行方不明だった母様の……いえ、6魔将パンドゥールの登場。
更にルナさんやセバスチャンの裏切り。
これは完全に想定外でした。
まさかあんな身近な人が牙を剥くとは……
でも懸念が残ります。
何故ならこちらには精神感応者であるルシウスがいます。
邪なる思惑を察知出来ない筈がないのです。
さらに二人が豹変したのはパンドゥールが現れてから。
何かそこにキーワードがあるのかもしれません。
困った顔をしたルナさんの事も気になります。
でも正直……今、一番許せないのは自分自身の不甲斐無さです。
確かに怒涛の展開だったのもありますが……
もっと気を配り対処するべきでした。
敵地である王都に行く以上、常に警戒をすべきだというのに。
貴族趣味な趣向や価値観に、どこか夢うつつというか浮かれ気分だった自分。
ええ、完璧乙女チックに酔ってました。
こうして振り返ってみればお馬鹿な言動に行動の数々。
浮き上がる羞恥に、居た堪れなくなります。
「まったく……
こんなドレスにウキウキしてしまって……」
身に纏った豪奢なドレス。
一般人の年収に匹敵しそうなそれですが、動きやすい様に手早く引き裂きます。
今はまず他の人達と合流することが先決です。
一応策は手は打ちましたが、多少は時間が掛かるでしょう。
兄様、ルシウス、タマモ、ガンズ様にメイドさん達。
そして……ネムレス。
共に転移宝珠の結界に包まれた部屋の皆を思い返します。
特に一番心配なのはアネットさんです。
完全に予期せぬ背後からの一撃。
幾ら武術の心構えがあろうと、回避し切れぬものではありません。
幸いな事に上手く致命傷は避けれたみたいですが。
ただ深く抉られた傷に溢れ出る血。
いずれにしても早く手当てが必要な筈です。
そうとなれば後は動くだけです。
こうして待つその間にもやれることはあります。
私が所持する技能の中から、探索系スキルを発動。
……いました!
ここからそう離れてない先、誰かいる様です。
ただ気になるのは仲間を示す青い点の周辺に外敵を示す赤い点が多数忍び寄っていること。
これは急がないといけません。
私は闘気術で身体を強化すると駆け出します。
内心を覆う不安を押し隠す様に。




