釈明となる、ゆゆしきなる召集っぽいです
「さて、今後の事を話そう。
この度はルナを通した招集に応じて貰い感謝している」
私の頭から手を放したユリウス様は再び椅子に腰掛け鷹揚に話し始めます。
そのご様子はどこか疲れた感じが見受けられます。
「ガンズに対し、ルシウス誘拐などの容疑が掛かってるのはルナから聞いたか?」
「ええ。転移前に概要は伺いました」
「ならば結構。
守護者を含む皆には、然るべき場でガンズの擁護をしてもらいたい。
まあこうしてルシウスが無事に戻ってきたのが何よりの証拠なのだが……
やはり使節団壊滅の経緯について聞きたいとうるさくてな。
勿論こちらの都合に合わせるのだ。相応の礼はさせてもらおう。
良いかね?」
「はい」
「わたしは構わん」
「師匠と同じく」
「ん? 守護者の事を師匠と呼ぶということは……
そなたもカルの子供、シャスティアだな?」
「御存知でしたか?」
「ああ、私の能力で事前に『観て』はいた。
だがこうして顔を突き合わせるのは初めてだな。
そなたとも会えて嬉しく思うぞ」
「光栄です」
膝を付き、見事な宮廷儀礼を見せる兄様。
ネムレスに仕込まれたのでしょう。
何をしても舞台俳優みたいに様になります。
「フフ。あまり畏まるな。
長男であるミスティはもっと堂々としたものだったぞ」
「に、兄様とお会いしたことが?」
「ああ。前に機会があってな。
少し時間を取って声を掛けたのだが……
いや、威風堂々というか唯我独尊というか。
なかなかの器だな、あやつは」
「まことに申し訳ございません……」
「本当ですぅ……」
ユリウス様に活き活きと、明朗快活に応じるミスティ兄様の姿が容易に脳裏に浮かび上がります。
同じ結論に達したのでしょう。
冷汗を浮かべたシャス兄様と共に頭を下げます。
「何を謝る。
親しき者の子供の成長を確認できたのだ。
これほど喜ばしいものはあるまい」
「左様でしょうか」
「ああ」
微笑むユリウス様にほっと一安心。
どうやら不敬罪で御家断絶は免れたようですね(ふぅ)。
「では話を戻そう。
そなたらにはこれから私と王城へ来てほしいのだ。
宮廷雀たちを黙らせる弁解と云うか釈明の場は私がすぐに用意する。
構わないか?」
「はい」
「では、さっそくだがルナよ」
「はい」
「転移の準備に入ってもらってくれ」
「畏まりました、ユリウス様」
傍らに控えていたルナさんが<転移宝珠>を取り出します。
大陸ならどこへでも行ける様ですが、特殊なフィールドを張って空間の座標指定を行う為、少し時間が掛かるのがこの宝珠の難点ですね。
緊急脱出には向かないタイプでしょう。
「そういえば兄上」
「どうした、ガンズ」
「ルシウスが言っていた例の魔族の事ですが」
「ああ、虚ろなる幻魔のことだな」
「はい。それの対処方法が判明しました」
「なんと! まことか、それは」
「はい。琺輪の守護者であるネムレス殿が」
「流石は。して、守護者殿。
いったいどのような……」
「な~に。そんなに難しいものではない。
どこでも出来る簡単な識別方法だ。
まずは髪でも何でもいい。
細胞の末端部分を……」
ガンズ様とユリウス様に促されたネムレスが解説を始めたまさにその時、
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!
ドン!!
眼を眩む凄まじい閃光。
更には耳を劈く爆音と共に、別荘が揺れ動くのでした。




