緊張となる、へだたりなき接遇っぽいです
「感動の対面のようだが、少し良いかね?
役者が出揃ったところで今後の方針について話し合いたい」
沈黙し事態の推移を静観していたネムレス。
開口一番、肩を竦め苦笑します。
っていうか、王族に対して何という口調!
傲岸不遜にも程があると思います(汗)
だ、大丈夫なんでしょうか?
オロオロと狼狽する私を余所に、声を掛けられたユリウス様は嬉しそうに頬を緩めます。
「久しいですな、琺輪の守護者殿」
「君も変わりない様で何より……
いや、それでは皮肉になってしまうか。
未来視という君の能力に対し、忠告はしたがわたしは止めはしなかった。
在り得ない可能性を限定的とはいえ選択可能とし、
本来の筋道を違える事が君の力の本質。
だがそれは脳に付随する器官、特に視神経に凄まじい負荷が掛かる。
使い続ければ視力を失うのは自明の理だった」
「いいえ、守護者殿。
それは違います」
「む?」
「貴方は幼い私にちゃんと説明をしてくれた。
リスクを心得、それでも能力を使い続けてきたのは私です。
いうなればこれは私自身が選んだ道。
貴方が悔やむことではありません」
「そうか?」
「その通りです」
親しげに話し合い談笑する二人。
取り残された私達はぽか~んと呆けてしまいます。
「あ、あの……
お二人は知り合いだったのですか?」
「ん? ああ。
詳しくは話せないが……
昔、守護者がらみの事件で若き彼と共に事案を解決したことがある」
「若き彼って……ネムレスの年齢は……」
「守護者は基本不老なのだよ。
決して不死ではないがね。
まあ守護者として琺輪に召喚されるまでは眠りについてるが。
君も知ってる筈だぞ、ユナ。
わたしは百年前の大戦にも参戦したのだから」
「そういえばそうでしたね。
なるほど……それで旧知の仲であった、と」
「うむ」
「ここでその質問を投げ掛け、
守護者殿と会話を交わす人物という事は……
そうか、そなたがカルの娘だな?」
「あ、はいっ!
カルティア・ノルンが娘、ユナティアといいます。
此度は御拝謁ありがとうございます」
急にユリウス様が指摘するので慌てて頭を下げ名乗ります。
「先程言ったがそんなに堅苦しくなくていい。
私の能力でこの場面は既に『観て』いたが……
そうか、カルとマリーの子もこんなに大きくなったのだな」
椅子から立ち上がったユリウス様が近寄ってきます。
緊張に硬直する私をよそに、片膝を付き顔を凝視します。
「カルの強さとマリーの優しさを内包してる美しさだ。
そなたは知らないかもしれないが……
私は君達の両親とは懇意にさせてもらってたのだよ。
だからこうして直接会う機会が出来たのは何より嬉しいと思う」
「こ、光栄です」
「禁忌の洞窟では愚息のお守りもしてもらったようだし……
良かったらこれからも仲良くしてやってくれ。
アレはその持って生まれた能力故、なかなか他人に対し心を開けない。
幸いな事にそなたには息子も素の自分を見せられるようだ」
「ち、父上!?(あたふた)」
「私の力の及ぶ限りで宜しければ……」
「うむ。任せたぞ」
憤慨するルシウスを置き、私の返答に御満足されたのか、ユリウス様は微笑と共に優しく頭を撫で始めます。
は、恥ずかしい!
でも不敬が無い様にしないと。
顔から湯気が出そうな羞恥に耐え、私は直立不動で堪えるのでした。
うう……頑張ります(涙)




