敬意となる、たちかおりし高貴っぽいです
セバスチャンと共に入室してきたのは、ルシウスと同じ金髪碧眼の壮年の男性。
40を越えているのに、老いを感じさせない若々しく整った容姿。
きちんと手入れのされた髭がいぶし銀の様な渋さを醸し出してます。
宮廷でなく移動中の為か、王族にしては簡素な旅装束だというのに……
立ち振る舞いから昇るオーラには高貴さが付き纏います。
しかしそこに確固たる隔たりはありません。
少年にしては鋭すぎるルシウスに対し、
男性は常に穏やかな笑みを浮かべているからです。
まるで少女漫画の中から飛び出て来た様な理想の王子様(少し年嵩ですが)の姿がそこにはありました。
自然とお辞儀をし、畏まりたくなります。
ガンズ様を含む皆さんも同様です。
「ああ、そんなに畏まらなくていい。
今は宮廷じゃなくプライベートだからね。
楽にしなさい」
そんな私達の態度を見て、苦笑しながら声を掛けて下さります。
中央に用意された椅子に腰掛けると、改めてこちらを見ながら微笑みます。
「あまり身体が丈夫ではないのでね。
椅子の上から失礼するよ。
ユリウス・ネスファリア・アスタルテ・ランスロードだ。
この度は息子が世話になったようだ。
礼を言わせてもらう」
男性、ユリウス様は傲慢さの欠片もなく気さくに声を掛けてくれます。
顔を見合わす私達。
一国の王族とは思えぬ気安さです。
どう対応していいか躊躇していると、
「兄上!
色々ありましたが、何とか無事に戻って参りましたぞ」
溢れんばかりの喜色を浮かべたガンズ様が応じるのでした。
お話するのが嬉しくてたまらない、って感じです。
瞳に宿った敬意を見るまでもなく、本当に尊敬をしてるのですね。
「おお、ガンズか。
壮健そうで何より。
此度の遠征はルシウスの伴を申し出てくれて感謝してる」
「何を水臭い。
兄上の為なら、ワシは幾らでも骨を折りましょう」
「その言葉、何より嬉しく思う」
「ぬはははははははは。ほれ、ルシウス」
「あっ……」
豪快な笑い声を上げるガンズ様に押し出され、
ユリウス様の前に押し出されるルシウス。
いつもの不敵さは何処へいったののでしょう?
もじもじと逡巡するルシウスは声が出ない様です。
その様子に苦笑を濃くしながらユリウス様は探る様に手を伸ばしルシウスの頭に置きます。
ビクっと震えるルシウスを見詰めながら、
「任務、大義であった。
私が不甲斐無いばかりに宮廷雀たちを押さえ切れなかった。
苦労を掛けてすまない」
「ち、父上……余は……」
「お前の活躍は、ちゃんと『観て』いた。
良く頑張ったな、ルシウス」
「父上……」
半泣きになりながらユリウス様に縋るルシウス。
優しく頭を撫で、ゆっくりとあやすユリウス様。
ルシウスも気丈に振る舞いながらも堪えてたものがあったのでしょう。
年齢相応の少年らしさが垣間見えて可愛らしく感じます。
でも私は気付いてしまいました。
どこか焦点のあっていない双眸。
霞を探る様な行動。
もしかしてユリウス様は……
「そうだ。兄上は目が悪い。
……いや、今となってはほとんど視えなくなってきておる」
「え!?」
疑問が顔に出たのでしょう。
ユリウス様から距離を取ったガンズ様が小声で皆に話してくれます。
「兄上の王家に伝わる力<思念具象>能力は未来視。
ほぼ正確な未来を『観る』ことが出来る。
じゃが強大過ぎる力故か、反動もあってな。
その度に視力を失ってしまうのじゃ。
今となっては曖昧な輪郭くらいしか視えぬ……まあ秘匿情報じゃがな」
「……良いのですか?
私達にそんな大切な事を知らせてしまって」
「構わぬ。どうせ秘匿とは名ばかりで、宮中に知れ渡っておる。
次の王位を狙う政敵達の手に寄ってな。
順当にいけば第一位王位継承者の兄上が後を継ぐのが定まり。
しかしこの事ゆえに反対する輩も多くてな。
政務が真っ当できぬ、と。
イチャモンではなく正当性のある反対意見ゆえに強固にも出られるぬ」
腕を組み溜息をつくガンズ様。
影ながら支えてきた為、気苦労も多いのでしょう。
でも少し離れた椅子の上で親子の語らいをするユリウス様とルシウスは、
そんな背景を知らなければどこにでもいるような互いを大切に想う親子の姿に見えるのでした。
恥ずかしいミスをすみません。
上げ直します。
あと、懲りずに新作を書きました。
良かったら拝見してみて下さい。
異世界学園転移ものです。




