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赤面となる、かざられない感想っぽいです

 開け放たれた扉。

 煌めくシャンデリアに輝く貴賓室。

 躊躇いを振り切ると、私は意を決して一歩を踏み出します。

 そこにはいつもの戦闘装束からフォーマルな服装へと着替えたネムレスと兄様がいました。

 奥には背の空いたドレスに着替えたルナさんや豪快な宮廷衣装を纏ったガンズ様の姿も見えます。

 兄様と打ち合わせか何かをしてたのでしょうか?

 扉の開閉音を捉えたネムレスが話を中断し、振り返ります。


「随分と遅かったのではないか、ユナ。

 皆、君の心配を……むっ」


 私への言葉を遮り、注視するネムレス。

 固まったように凝視する視線に負けじと、私も見返します。

 白髪に近い白銀の髪。

 鋭く全てを見据えながらも、どこか優しさと寂しさを秘めた双眸。

 試練を乗り越えた者が持つ、秘めた強靭な意志をたたえている唇。

 豪奢な夜会服にも負けない、しなやかな筋肉と少し焼けた銅の肌。

 あれ、何でしょう?

 ネムレスに見詰められてる……

 ただそれだけのことが何だか気恥ずかしく……

 顔が熱くなり赤面していくのが自覚出来ます。


「ど、どうですか……?」

「いや……これは驚いた」

「に、似合わないならそう言えばいいじゃないですか!」

「何を怒っているのだ、君は」

「だってそんな風に言うから……」

「正直想定外だったと言わせてもらおう。

 だが、それはいい意味で予想を裏切られたからだ」

「え?」

「元々君は容姿が端麗だったからね。

 相応しい装いをし、磨けば光ると思っていた」

「そ、それって……」

「似合わない訳がないだろう、ユナ。

 従来の君の魅力を損ねる事無く十二分に引き出されている。

 なあ、シャスティア」

「(なんでそこで僕に譲っちゃうかな~この人は。

  まっ、そこが師匠らしいといえば師匠らしいんだけど)

 師匠の言う通りだよ、ユナ。

 凄く似合ってるし、可憐だと思う」

「に、兄様まで……

 からかうのは止めて下さい……」

「ん? からかってなどいないぞ。

 俺はこの通り朴念仁で気の利いた事は言えないが……

 入室してきた君に目を奪われたのは確かだ。

 良く似合ってる。可愛い」

「うっ、やっ、あう……」


 飾らない率直な言葉に息が詰まります。

 全力疾走した後の様に呼吸が苦しい感じ。

 傍らにはニマニマと笑うタマモと面白くなそうなルシウスが追随します。

 騒ぎを聞きつけたのか、ルナさんやガンズ様もやってきました。


「おお。随分と華やかではないか!

 流石はマリーの娘、将来が楽しみじゃわい」

「ホントね。ガンズの言う通りだわ~」


 先程の遺恨を水に流してくれたのでしょうか。

 ガンズ様と共に、何事もなかったような笑顔で褒めてくれるルナさん。

 何気無いその気遣いを嬉しく感じ、少し泣きそうになっちゃいます。

 こちらこそ先程は失礼をしましたと、

 ちゃんとした謝罪の言葉を述べようとした瞬間、


「皆様、大変お待たせ致しました。

 ユリウス・ネスファリア・アスタルテ・ランスロード様の御来場で御座います」


 軽やかな鈴の音とセバスチャンの宣言と共に、

 跡目相続で揺れるこのランスロード王国の次期王位継承者、

 ルシウスのお父様であるユリウス様が主賓用の扉から入室してくるのでした。



 天然だけにタチが悪いネムレス。

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