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降参となる、いろどられし着飾っぽいです

「良いですか、ユナ様。

 いかに珠玉の原石とて研磨しなければ役に立ちません。

 磨き、飾り立ててこそ輝くのです」


 私を捕獲したメイドさん(お名前を伺ったら、アネットさんと言うらしいです)から有り難い訓示を頂きます。

 が、まるで親の仇みたいに内臓を吐き出す様な勢いでコルセットをギチギチっと絞るのはどうかと。

 正直先程食べたスイーツが込み上げてきちゃいそうになるのを必死に堪えます。


(うう、お洒落なんか嫌いです……)


 でもアネットさんを恨む気にはなれません。

 彼女は懸命に職務を真っ当してるだけなんです。

 決して私をおもちゃにして喜んでいる訳じゃありません(多分)。

 そ、それに我儘も聞いてもらっちゃいましたしね!

 ……ホンの少しだけど嫌な予感がするので。

 虫の知らせというか、第六感シックスセンスは馬鹿に出来ません。

 予知とか霊感などと呼ばれるこれら。

 でもその本質は怪しげなものじゃなくて、生き抜く為に人間誰しもが持ち得ていた生来の能力です。

 スキル<予兆>や<直感>と似てはいますが、もっと原始的なモノ。

 様は無意識下で把握してる違和感だと思います。

 人間の意識は無意識下でまるで大海の様に繋がっていると有名な心理学者さんは言いました。

 だからこそ何か異変があった際、その大海を通じて察知しやすい。

 特に身近な人や物ほど察知しやすい傾向がありますしね。

 ……とまあ、何でこんな薀蓄を述べてるかといいますと。

 こうしてる間にもドレスに着替えさせられた私は髪を結い上げられ、コサージュを差し、仕上げにメイクアップをする為、閉眼中なのです。

 アイシャドウの邪魔になるので完全に視界は真っ暗なんです。

 暇なので思考模索するぐらいしかないのです。

 色々な懸念事項が浮かびますが、一番は間近に迫った謁見。

 これからお会いするルシウスのお父様の事です。

 仮にもランスロード王国で最も王位に近い方ですからね。

 不敬が無い様にしませんと。

 短い付き合いとはいえ、ルシウスとは心から親しくさせて貰ってると思います。

 ただ残念ですけどそこは身分の差があります。

 国を担う王族と、歴代勇者を輩出しやすいとはいえ所詮は平民の私。

 転生前の近代日本と違い封建制度の顕著なこの世界ではその差は絶対です。

 元来ルシウスと口を利くのも憚れるのです。

 まあ互いに全てを曝け出してた仲なので、信頼関係は構築されてますけど。

 でも遠慮はいらないのでしょうが、配慮は必要です。

 特に臣下の方々の前では。

 ガンズ様や他の方の話を聞くまでもなく一廉の人物ですし。

 けどそんな方を蹴落としてまで王位を手に入れたいものなのでしょうか?

 権力に興味がない私には理解出来ない価値観です。

 更衣室に据えられた大鏡の前。

 活き活きと化粧水やらファンデやらを揮うアネットさんの気配を感じながら取り留めもなく考えます。


「はい、これで完成です。

 目を開けて宜しいですよ、ユナ様」

「ひゃ、ひゃい!」


 満足げなアネットさんの声。

 つらづらと思考の泉に落ちていた私は慌てて返答し目を開けます。

 驚きました。

 目の前の鏡の中。

 そこには目を大きくさせこちらを見詰める美少女がいました。

 結い上げらえた髪は可憐な花々で彩られ、

 若草色のドレスはまるで妖精の様に翻り、

 派手ではないも目鼻を強調するメイクは顔の輪郭を際立たせる。

 こうしてるとまるで女優さんみたいです。

 言葉を失い驚愕する私。

 そんな私にアネットさんは何かをやり遂げた顔で、


「元がいいので奮戦してしまいました。

 いかがですか、ユナ様?」


 とドヤ顔で尋ねてきます。

 メイク一つでこんなにも変わるものなのですね(感嘆)。

 よって私は完全に白旗を上げ、


「だ、脱帽です……」


 お洒落に興味がないとした態度を改め、完全平伏で応じるのでした。




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