極上となる、はにかんでる笑顔っぽいです
湯に顎まで浸かりブクブクと泡を立てます。
ほんのり香るのはアロマの匂い。
湯気と共に浴室全体に広がっていきます。
更に霊験あらたかな<ヴォイルシー>の効能でしょうか?
身体がポカポカと上気していくのが実感出来ます。
だけど芯から温まっていくというのに、私の心は冷え切ったまま。
原因は他でもない先程の事です。
気遣いの出来ない、至らない自分の情けなさに打ちのめされちゃいます。
項垂れる私を心配したのでしょう。
タマモがそっと忍び寄って来ました。
「大丈夫? おねーちゃん」
「タマモ……
そんなに私、元気がなさそうに見えます?」
「うん。何だか便秘一週間めな感じの深刻さ」
「切実だけど切迫性のない深刻さですね」
「まあ何事もため込むのは良くない、ってこと。
理由はさっきのやり取りの事でしょ?」
「聞こえてました?」
「妾を誰だと思ってるの?
こう見えても災害級だったんだよ。
幾ら弱体化してるとはいえ妖狐としては耳が良くないと、ね」
髪の毛に隠れてる獣耳をヒラヒラさせるタマモ。
そういえばあまりの可愛さに失念してましたが、この娘は伝説の妖狐でしたね。
「そうですか……まあタマモの言う通りなんですけど。
興味本位からルナさんを傷付けてしまったかな~って。
浅はかな自分が嫌になってしまって」
「それは仕方ないよ。
ルシウスみたいなテレパスでも無い限り、他者の内心なんて分からないもん。
何を思い何を考えるかなんて、推測は出来るけど確定は出来ないし」
「うん。まあ」
「だったら最良を信じ、今出来る事を最大限やっていくしかないでしょ?
おねーちゃんはルナさんを知りたいと思った。
だから尋ねた。
そして知った。
ならば……あとはその後にどう対応するか、でしょ。問題は。
今そうやってウジウジするのは間違いだと思うけどな~」
「そう……ですね。
ええ、タマモの言う通りだと」
「まっ、そうやって悩む事が大事なんだけさ。
人間悩まなくなって停滞しちゃったらお終いだから」
「そうなのですか?」
「そうよ。
進歩を止めた時、種としての繁栄は止まる。
だからありとあらゆる存在は高みを目指すのでしょう?」
「流石はタマモ。含蓄深いですね~。
それなのに私はささいな事でいつも思い悩んで。
はあ……私ってまだまだ未熟ですね」
「な~に言ってるの、おねーちゃん。
誰だって日々精進し生涯学習。
常に自らを研鑽していかなくちゃならないのよ?
おねーちゃんだって悪気があった訳じゃないんでしょ?」
「それはまあ、そうですけど……」
「ならば必要以上に気に病む事は無いんじゃない?
あんまり気にし過ぎると、ルナおねーちゃんだって嫌だろし」
「そうかな?」
「そういうもんよ。
誰だって触れられたくない過去の一つや二つはある。
勿論、妾だってそう。
けど重要なのは過去に囚われない現在の生き方。
そう気づかせてくれたのはおねーちゃんなんだけどな」
「え? そ、そうなんですか?」
「これだし(苦笑)。
まあ……計算じゃない無自覚なそういうとこが好感もてるんだけどね。
さっ、そろそろ上がろうよ」
はにかむ様に微笑み私の手を取るタマモ。
妹系美少女による極上の笑みと慰め。
私は胸の重荷が少し軽くなった事を感謝しながら、湯船から上がるのでした。
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ちなみに主人公であるユナの兄、
ミスティが<学院>シリーズ(一応完結)
シャスティアが<タガタメ>シリーズ。
100年前の先祖、アルが<現代勇者>シリーズになります。
微妙にリンクしてますので良ければどうぞお読みください。




