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騒動となる、ろくでもない陰謀っぽいです

 えっへん、と。

 あまり豊かではない(何でしょう。心が痛みます)胸をドヤ顔で張るルナさん。

 しかし応対するガンズ様の顔は怖いくらいに無表情でした。


「あれ? 驚かない?」

「ふんっ! お主の宣言で全てが推測できたわ」

「あはは~そうなんだ~」

「まったく……自分で立案した使節団を自分で壊滅に追い込んで、その罪状を押し付ける気なんじゃろ?

 おまけにこっちが本命じゃろうが、次期王位後継者の血筋であるルシウスも亡き者に出来れば万々歳じゃしの」

「なっ! 余はこうして無事なのに!?」

「あら、ルシウス様。

 御無事で何よりです~」

「敬意がないぞ」

「え~あたしは誰にでもこんな感じでしょう?」

「まあそうじゃが……

 しかしルシウスよ」

「何ですか、叔父上?」

「義憤に駆られるお主には申し訳ないが……

 残念じゃがお主の生死はこの際関係無いのじゃよ、奴等には」

「それはどういう」

「兄上派である儂が不貞を働いた。

 そういう攻撃材料があれば事実などどうでもいい」

「へ~ちゃんと理解してるんだ?

 さすが考える筋肉。

 脳みそまで筋肉の馬鹿とはそこが違うね~」


 溜息をつき解説するガンズ様に面白がるルナさん。

 何となくですが事態の背景が視えてきました。

 典型的な御家騒動の陰謀劇に巻き込まれたみたいですね。

 うっすら聞いてはいましたが、ガンズ様は罠に掛けられたみたいです。


「して、犯人の目途はついてるのか? 

 老獪なベネディクトあたりが喜びそうな策じゃが」

「ん~正直まだユリウス様も把握し切れてない感じかな?

 まあもう手配書が配布される寸前まで来てるみたいだけどねー」

「馬鹿な、早過ぎる。

 どう考えても不自然だろうに。

 誰も疑問に思わないのか?」

「そう言うけどねーカル。

 王都っていうか宮中は、権力闘争とかでドロドロだよ~。

 皆がそう思ってても表立って言える訳ないじゃん」

「だが……」

「まあ言うても無駄じゃ、カル。

 この手の事は段取りが整った段階で反撃しようがない。

 やるからには根本的な解決が望まれる」

「そうなのか?」

「うむ。まあ、そういう訳じゃルナ。

 おそらく転移宝珠なんぞまで持ち出したのは兄上の方で動きがあったのだろ?」

「そういうこと。

 反証を行う為にも、証人を確保したいみたい。

 だから二人とも王都に転移で戻って来て欲しいって。

 こないだのテロで組合のテレポーターはズタズタでしょ?

 所在感知の魔術で存命と場所は判明したから、あたしが飛んできたんだよ~」


 ルナさんが言ってるのはあの忌まわしい同時多発テロの事です。

 辺境を中心に各地を騒がせたあの事件ですが、まだ全てが片付いた訳ではありません。

 癒えない爪痕は各地にしっかり残されてます。

 冒険者組合の相互転移サービスの中断もその弊害の一つです。

 現在の人々は一部の術師達による転移魔術を別にすると、馬車や徒歩などの移動手段に頼らざるをえません。

 地方を巡回してた使節団も補給物資を積んだ馬車がメインだったらしいです……

 壊滅した今となってはもう関係の無い話ですが。


「儂らがここに来た目的は達成された。

 今なら王都に戻るのもやぶさかではない」

「ホント? なら早くい」

「じゃが共に連れて行きたい者達もいるのだ」

「え~マジで?

 だって定員があるんだよ、これ」


 ルナさんが頬を膨らませて宝珠を振り抗議します。 

 国家の秘宝を手荒に扱っていいのでしょうか?

 見てるこちらの胃が痛くなります。


「具体的には何人までいけるのじゃ?」

「施術者であるあたしを除けば後6人が限界~

 この大陸なら何処へでも転移出来るのが宝珠の凄いとこだけど、

 残念な事に魔力による人数制限があるのよ~」

「ふうむ。なるほど。

 まあそういう訳で、じゃ。

 急な話じゃが儂らは王都に戻らねばならん。

 短い間だったが世話になったな。

 この恩は決して忘れぬ。

 ほれ、ルシウス」

「あ、うっ……えっと。

 余はそなた達と会えて本当に良かった。

 自分の持つ力が厭うものでは無いと実感出来たしな。

 か、感謝してるぞ……」


 ガンズ様に促されたルシウスが赤面しながら頭を下げます。

 あ~何というか、ついにデレ期が到来したようです。

 これは非常に良いものを見た感じがします。


「ぬはははははははははははははは!

 こやつも一人前の口を叩く様になったわ。

 もう立派な男子おのこなのだな」


 うんうん、と感慨深く頷くガンズ様。

 可哀想に引き合いに出されるルシウスはゆでだこ状態です。


「それでは、ネムレス殿。

 先程お聞きした情報を活用する為にも、

 是非とも御同行を願いたいのじゃが……」

「勿論だとも。

 レムリソン大陸一の王国に虚ろなる幻魔が入り込んでるなど、

 琺輪の守護者として見逃せない事態。

 喜んで手伝わせて頂く。ただ……」

「ただ?」

「わたしの弟子を連れて行って構わないかね?

 基本的な指導はすでに済んでいる。

 後は実戦を積むだけなのだが」

「カルの息子の事か?

 こちらこそ喜んでお願いしたいくらいじゃ」

「そういう訳だ、シャスティア。

 これがおそらく修行の仕上げとなるだろう……良いか?」

「はい!」

「カル」

「ああ、息子を宜しく頼む。

 わたしは転移に同行せず、少し気になる事を追ってみるつもりだ」

「カル様が残るならわたくしも残らせて頂きます」


 同行を決めるネムレス、シャス兄様。

 居残る父様とファル姉様。

 残る枠はあと2つ。


(どうするのじゃ、妾がおねー様よ)


 こっそり念話でタマモが尋ねてきます。

 どこか悪戯めいたその表情。

 もう……私の返事は決まってるを知ってるでしょうに。

 だから私は毅然と答えます。

 恐る恐るといった感じで聞いてきたルシウスに対し、


「ゆ、ユナ。

 そなたは、その……」

「ねえルシウス様」

「な、何だ」

「私を専属メイドにして下さる件……

 まだ有効ですか?」

「は?

 あ、ああ……勿論だ!」

「ならもう少しだけ傍にお仕えさせて下さいな。

 私の……御主人様」


 とスカートを摘まみ、とびっきりの笑顔で応じるのでした。




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