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恥も外聞も投げ捨てるようです

「父様!」

「叔父上!」


 二度と再会出来ない覚悟を抱いた劇的な別れの後、

 苦労をしましたがやっと大事な家族を迎える事が出来るのです。

 特に母様との別離を経験してる私にとって、それは何にも代え難い充足感がありました。

 嬉しさの余り駆け出そうとする私とルシウス。

 しかし浮かび上がった不安に思わずたたらを踏みます。

 果たして本当に魅了・洗脳は解除されてるのでしょうか?

 窮地に陥った白面がそういう演技を命じてるだけなのでは?

 一抹の疑惑がどうしても拭えません。

 けど、私達にはこういう時の切り札的存在がいるのでした。


「……ルシウス?」

「うむ。大丈夫だ。

 深層意識まで探査したが完全に思惑の糸は切れている。

 叔父上もお前の父君も完全に無事だ、ユナ」


 にっこりと天使の笑みを浮かべ断言したルシウス。

 そしていきなり駆け出すや、その勢いのままガンズ様の胸元に飛び掛かります。


「ぬおっ。

 手荒い歓迎じゃな、ルシウス」

「これぐらい当然です!

 どれほど余が心を痛めたかと……」

「むう。随分心配掛けたな」

「まったくです!

 叔父上がいなくとも余は上手くやっていけますけどね!」

「涙を浮かべたまま強がっても説得力が無いし、ちっともカッコ良くはないぞ。

 ……まあ、本当に心配させた。

 ワシの力の及ぶ限り、これからもお主の成長を見守りたいと思うのじゃが……良いか?」

「いいに決まってるじゃないですか!

 未熟な余には、まだまだ叔父上の庇護が必要なのですから!」


 涙目のルシウス(レアですねー)を優しく抱き締めながら語るガンズ様。

 ああしてるとルシウス様も歳相応にしか見えないから不思議です。

 一方、判別の賽が下りて安堵した私は、落ち着いた速さを装いながら父様に近付きます。


「父様」

「ああ。心配掛けたな、ユナ。

 この通り何とか無事に自我を取り戻せた。

 自分の至らなさで迷惑を掛けたな」

「迷惑だなんて……ちっとも思いません。

 ただ違います、父様」

「? ああ、強くなったなユナ。

 意識が霧の様に霞掛かった状態だったが、ユナの動きは視えていたよ。

 幻惑魅了状態でレベルがAAクラス相当まで低下してるとはいえ、

 わたしと互角以上に張り合うとはかなりの――」

「そうじゃありません!!」


 察しの悪い父様に思わず声を荒げてしまいます。

 自制できない私の瞳からは涙がポロポロ。

 恥ずかしいとは思いますが鼻水だって出ちゃいます。

 そんな私を見て当惑する父様。

 どうしていいか、ホン~~~~~~~~~~~~トに分からない様です。

 ついに見兼ねたのか兄様とネムレスが耳打ちをします。

 弾かれた様に驚く父様。

 ゆっくり深呼吸をすると、穏やかに微笑みます。

 そして私の頭に手を伸ばし、優しく髪を撫でながらそっと告げます。


「ただいま、ユナ」

「おかえりなさい、父様!!」


 喪い掛けたモノ(家族)を取り戻す……

 それには多大な労力と些細な奇跡が必要です。

 でも安易な絶望に身を委ねることなく、全力で抗うことこそ大事なのでしょう。

 どうにか共に無事迎えられた親子の感動の再会。

 私は恥も外聞も投げ捨てて、

 ルシウス同様、

 小さな無垢の幼子みたいに父様の胸元に飛び込むのでした。




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