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信頼が生み出す絆の力のようです

 陣形特記<アレイド>。

 それは未だスキルさえない時代に生まれた神代の産物です。

 遥かなる昔、神の恩寵は身近にありました。

 世界には福音が満ち、その庇護を受けるが可能だったからです。

 強大な力の御許で形成される楽園。

 在りし日の理想郷。

 苦難から解放された人々が穏やかに笑い合う。

 世界は美しく輝いていたそうです。

 しかし恐るべき力を所持していたのは、神に敵対する魔とて同じ事。

 自らの眷属を用いて虎視眈々と楽園への侵略を企てます。

 その大概は神の張った結界に弾かれましたが、

 偶然にも侵入したモノ達による被害が後を絶ちませんでした。

 無論対抗出来た者達もいます。

 前述した聖人や英雄クラス。

 生まれつき高い霊格と戦闘力を持つ彼等なら立ち向かう事は出来ました。

 けど、力無き人々はどうすればいいのでしょう?

 ただ座して救われるのを待てばいいのでしょうか?

 神により開校されたサーフォレム魔導学院の尽力により、

 劣化した魔法とでもいうべき魔術は確かに広まっていました。

 それでもまだまだ様々な力を有する闇の尖兵には抗えなかったのです。

 だけど人々は諦めませんでした。

 我々の力は確かに弱い。

 ならば束ねればいい。

 数多の試行錯誤の末に生み出された研鑽の結晶。

 信頼と絆が結ぶ集団攻勢陣形。

 それがアレイドです。

 スキルが容易に扱えるこの時代、一部のパーティ以外では確かに廃れているのが現状です。

 格上の存在に対抗出来るアレイドですが、その発動には構成者間の信頼が何より必要となります。

 集団攻勢を阿吽の呼吸で行う難しさ。

 仲間が何を考え、

 何を望み、

 更に自分はどう支えればいいのか。

 語り合う事無く通じ合う程の絆。

 余程の事がないと、他人同士が分かり合うなんて難しいと思います。

 結局それは私達も同じです。

 ネムレスの口からアレイドの説明を受け、

 ルシウスから王家に伝わる特殊陣形の構成を聞いた時もそれがネックでした。

 パーティを結成してるとはいえ、所詮付け焼刃の自分達に果たして使いこなす事が出来るのか、と。


「確かに君の疑問は最もだ、ユナ」

「ですよね」

「だが君は失念してるのではないか?」

「え?」

「俺達には絆の代わりに皆を結んでくれる存在がいるではないか」

「あっ、まさか!?」

「そう……皆が揃うまでの守りの要は俺。

 しかし九尾を討つ攻めの要は彼に掛かってる……」


 ネムレスが指し示す先、驚いた顔をするルシウスがいました。

 そう、私達には精神感応能力を持つ彼がいます。

 受動的に他者の思考を読む事が出来るだけでなく、

 能動的に精神波を飛ばし意識を共有する事が出来るルシウスの力なら――

 私達は仮初めとは固い絆で結ばれたのと同じ状態になります。

 個人個人は及ばなくとも、群体としての力は別。

 幾分か誤差はありますが……戦闘力に可算すれば、

 スキルなどが豊富なものの、身体がまだ出来てない私はいいとこ100前後。

 直接的な戦闘は行えない支援専門のルシウスで50。

 遠距離攻撃に優れたシャス兄様で130。

 幻獣としての特性を持つリューンは220。

 守護者として秘技の数々を誇るネムレスが250くらいになるでしょう。

 スキルや特性により若干の変動はありますが、恐らく平時で1000。

 戦闘時でそれ以上の戦闘値を持つ災害級妖魔王<金毛九尾の狐>には到底敵いません。

 けどルシウスが媒介しアレイドを扱う事が可能ならば……

 話は変わってきます。

 何故なら集団戦において戦闘値は単純な足し算ではないからです。

 個々の連携が力を増してゆく。

 ましてアレイドは集団戦に特化した戦術。

 相互理解と共に比例し倍増する力。

 忌むべきであった自分の力の有意性にルシウスは当惑してる様でした。

 無理はないかもしれません。

 今までは化け物と自らを蔑み、知りたくもない他人の闇を覗いてきてしまったのですから。

 でもこれからは違います。

 アクティブではなくパッシブな力の在り方。

 気休めでなく、その方向性がどれだけ彼を救ったのか。

 突入前の作戦会議兼ミーティング時、

 嬉しそうな顔をするルシウスに微笑むネムレスからは窺えませんでした。


(むむむ……結構やりますね、ネムレス。

 でも天使のほっぺは絶対譲りませんよ?)


 きっと私の汚れた欲望はルシウスにはバレバレでしたでしょうが、私は背後からルシウスを抱き締め極上の柔らかさを持つ頬をスリスリするのでした。 






攻めの反対は?

1 守り

2 受け

咄嗟に2が思い浮かぶ自分は汚れなのでしょう(溜息)

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