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素直じゃないのは需要あるようです

「トレエンシア様に?」

「ええ」

「そうだ、ユナ。

 今回の概要をあの男とシャスティアから聞いた時、

 通常の対応では対処し切れないと吾とファルリアは判断した。

 吾はこう見えても幻想種。

 精霊界とも繋がりが深い。

 更に以前の宴で縁故を深めておいたのでな。

 何とか連絡する事に成功し、こうして樹を媒介したゲートを開いてもらった。

 ユナの家には樹齢を重ねた樹があったのが幸いした」

「このゲートは……」

「樹聖霊殿の住む宮廷に通じている。

 そこでユナの治療を行うそうだ。

 特に……その腕は吾等では癒す事が叶わないからな」

「分かりました。

 でもありがとう、リューン。姉様。

 私の為にそこまでしてくれて」

「お礼ならネムレス様達におっしゃって下さい。

 リューン様を探しに、わざわざ幻想郷近くまで探索して下さったのですよ」

「本当ですか、二人とも」

「ん? ああ、まあな。

 しかし気にするな、ユナ。

 君に受けた恩義を返したいというのもあるが、俺はただ自分が望むから行っただけだ。

 それはシャスティアも変わらない」

「そうだよ、ユナ。

 僕はただ自分がそうしたいからそうしただけ。

 それに可愛い妹を助けるのは兄として当然だしね」

「ネムレス、兄様……」

「さあ、そろそろ参るとしよう。

 ゲートを開き続けるのも限度がある」

「貴様が仕切るな、天然系性犯罪者」


 ネムレスにお礼を言ったのが気に障ったのか、リューンが不貞腐れた様に急かします。

 それに対し冷たく反論し返すネムレス。

 ホントこの二人は水と油。

 磁石の同じ極同士ですね。

 少しは仲良くは出来ないのでしょうか?


「「無理だ(な)」」


 ……左様ですか(はあ)。

 私は溜息を零しながら姉様に挨拶をします。


「では姉様、行って参ります」

「はい、行ってらっしゃいませ。

 樹聖霊が支配する樹の精霊界は調和に満ちた美しい所と伺ってます。

 カル様達の事もありますし、あまり心奪われない様ご注意ください。

 時間の流れが速いとの噂もありますから」

「そうなんですか!?」

「ええ。精霊界では時間の経過速度が加速されるそうです。

 偶然精霊界に迷い込んだ旅人が、一晩過ごしたつもりがこっちでは一月も過ぎていた……等と云う逸話も耳にしますし」

「こ、怖いですね」


 まさに浦島太郎状態。

 満喫して帰ってきたらお婆ちゃんな姉様がお迎えとか嫌過ぎます。


「まあトレエンシア様にもそこは配慮なさって下さるでしょう。

 どうかよろしくお伝え下さい。

 わたくしはいつでもスイーツをご用意してお待ちしてる、と」

「それはトレエンシア様にとって何よりのご褒美だと思います」

「うふふ。では」

「はい。行ってきます!」

 ……あれ、もしかして私一人?」

「そうだ。長居は出来ないのもあるが、吾等は招かれざる客なのでな」

「残念だが、な。

 特に俺の様な血と戦の匂いが染みついた者は先方に対し不敬だろう」

「待ってるよ、ユナ。

 準備をして」

「準備?」

「……行くんでしょう、父様達を助けに?」

「はい」

「ならば僕達はダンジョン探索用の装備を整えてる。

 武装もして来たしね」

「同行……してくれるんですか?」

「当然でしょ。

 ユナが断っても僕は付いていくよ。

 師匠もリューンさんも同じ意見」

「二人とも……」

「気に喰わない奴ではあるが、ユナの親だしな」

「カルには借りがある。

 それを返し切らないと、な」


 思い思いに呟き視線を反らし合う二人。

 ホントに可愛くないです。

 素直に父様が心配だから同行する、でいいのに。

 男のツンデレって需要あるんでしょうか?

 最近は壁ドンとかのオラオラ系が流行らしいですけど。


「はい。では行ってきます!」


 何はともあれ現実です。

 私は力強く拳を上げると、樹の洞にあるゲートに飛び込みます。

 七色に輝くゲート。

 軽い酩酊感と浮遊感。

 そして……





「ようこそ参った、ユナ。

 久しいのう」


 再び意識が戻った時。

 そこは樹で出来た鮮やかな広大な宮廷。

 更に目前には優雅に微笑むトレエンシア様の美貌がありました。





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