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気だるげな脱力感に身を委ねるようです

 眼を覚ますと天井が見えました。

 ぼやける視界を凝らせば見覚えのある内装。

 そう、ここは我が家にある母様の診察室です。

 私はどうやら寝台に横たわっていたようです。

 ふと隣りを見れば、私同様に寝かされ安静にしているルシウス様がいました。

 何でしょう……記憶が定かでありません。

 頭をフリフリし、霞掛かった脳裏を明確にしていきます。


「えっと、私……」

「気が付かれましたか、ユナ様」


 身動きする私の頭をそっと押し留め、

 慈しみに満ちた声が掛けられます。


「ファル姉様……?」

「まだ本調子ではない筈。

 ここはゆっくりお休みください」

「おやすみ……?」

「はい」

「!! そうだ! 父様が!」


 慌てて身を起こそうとした私。

 ですが、

 バランスを崩し寝台から転げ落ちそうになります。

 薄々と感じていた違和感に目を向ければ、

 私の左腕は二の腕から先がありません。

 包帯に覆われてはいるも、慣れ親しんだ私の一部が欠けていました。

 先程もその事を失念し、体重をかけ損ねたのです。

 私は爆発的に蘇っていく記憶にその手を抱き込み尋ねます。


「ファル姉様……父様は?」

「まだ……お戻りになってはいません。

 禁忌の洞窟、最秘奥へ向かわれたままです」


 私の問いにファル姉様は顔を曇らせ応じます。

 窓から差し込むのは朝日。

 もうあれから数時間は経過したのでしょう。

 続けて尋ねようとした私ですが、優しく姉様に止められます。


「今は身体を休ませてくださいませ、ユナ様。

 シャス様やネムレス様にも連絡が付きました。

 癒し手であるリューン様を連れてくるとの事。

 それまではどうかご自愛ください」

「姉様……」

「大丈夫。あの二人は英雄に最も近い方達です。

 遅れを取る事はありません。

 今のユナ様に出来るのは身体を休め、

 お二人が帰って来た時に明るい笑顔を見せる事です。

 違いますか?」

「い、いえ……」

「ならばもう少しだけお休みくださいな」

「はい……」


 薬液を塗布した包帯を取り替えてくれる姉様。

 点滴を付け直し、湯で身体を清拭してくれます。

 甲斐甲斐しいその様子を見ながら、

 私は全身を襲う脱力感に再び身を委ね眠りにつきます。

 そういえば起きる直前、何か夢を見た気がします。

 けど、どうしても思い出せません。

 もどかしく抗うその事が哀しく、

 私は何故か泣いてしまいました。













 






 その日、

 二人は戻ってきませんでした……


 

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