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突然の展開に思考が追い付かないようです

(えっ……と、

 金色に輝く鮮やかな九つの尻尾。

 同性でもゾクゾクと震えるほどの美貌とスタイル。

 更にチャーミングな狐耳を見るまでもなく……

 やっぱりアレってアレですよねー。

 あはは~☆

 ダンジョンの入り口を開けたらいきなりラスボスですか?

 もう~RPGなら駄目ゲー確定ですよ。

 っていうか、難易度悪過ぎです。

 これじゃ製作者にクレーム殺到ですね~

 確かに斬新な展開ですけど……)


 突然の衝撃。

 喜劇めいた冗談のような場面に思考が追い付きません。

 構える事も出来ず茫然自失に陥る私。

 妖しい笑みを浮かべ近付いてくる九尾の狐。

 そんな中、誰よりも速く動いたのはルシウス様でした。


「撤退するぞ、ユナ!」


 腰に結わえ付けていた逃走用の煙幕弾を瞬時に地面へと叩きつけ、

 私の手を強引に牽き駆け出します。

 切羽詰まったその表情、

 その感情に、やっと私も理解が追い付きます。


「る、ルシウス様!?」

「見るだけで分かる。

 アレは駄目だ。

 戦闘力が推定出来ないほどのバケモノ。

 人が太刀打ち出来る存在ではない!」

「でも、それじゃあ……!」

「仕方ない(ぎりっ)。

 全ては命あっての物種。

 聖鏡は後回し……

 ここは出直しだ!!」


 回廊中にもうもうと煙が立ち昇り方向さえ定かでない視界の中、

 一目散に全力で駆け出す私達。

 固く握った拳に痛い程の力を籠めて言い放つルシウス様の心は不安と焦燥に満ちてました。

 勿論ルシウス様のおっしゃった事は正論だと思います。

 望んだ結果を前にした時、人は我を失いがちになるからです。

 そういう意味では、瞬時に逃走を選択するルシウス様の判断は的確だったのでしょう。

 ですが今回は相手が悪過ぎました。


「妾を前に、容易に逃れられると思うておるのか?

 判断が甘いのぅ~槍皇の末裔よ」


 この煙の中、どのような移動をしたというのでしょう。

 開けた視界の先には苦笑する九尾の狐の姿。

 そう、逃走は失敗。

 残念ですけど弱い気持ちを抱えたままでは生き抜けません。

 ならば闘争あるのみ!

 生きる事は戦う事。

 死中にこそ活を見い出します。

 走る勢いをそのままに私は顕識圏を展開。

 触れた瞬間にノイズが脳裏に奔りますが強引にキャンセル。

 瞬く間に具現化した退魔虹箒を叩きつけようとして、


「あ……れ?」


 うでが、ないことに気付きました。


「え……?

 私の……手、は……?」

「筋はいい。

 選んだスキル構成もその齢にしては見事と言えよう。

 じゃが王族の守護者としては未熟も未熟。

 まずは如何ともしがたいレベル差をどうにかすべきじゃろうな」


 楽しげに私に手を振る九尾の狐。

 豊満な胸元の前で、不自然に揺れ動く小さな小さな腕。

 それは痛みすらなく断ち切られた、

 私の……左腕でした。


「あっ……

 い、いやあああああああああああああああ!!」

「ユナ、ユナああああああああああああああ!!」


 認識した瞬間、脳髄を焼く様な熱さと傷み。

 私は失った二の腕から先を押さえながら転げ回ります。

 狼狽し私を抱え絶叫するルシウス様。

 繋がった心から伝わる想い。

 その心と存在が、発狂しそうになる私をどうにか引き留めてくれます。


(そう……です、よね。

 今は……

 私が……戦わないと、いけないのですね……)


 逆境にこそ人の真価が問われます。

 私の前には守るべき人、救いを求める人。

 ならば私は幾度でも立ち上がれます。

 それが私の選んだスタンス。

 勇者ではないけど、

 母様を取り戻すまで諦めないで戦うと決めた、

 精一杯の生き方なのですから。

 ガクガクする膝。 

 湧き上がる嘔吐感。

 おこりの様に震える身体。

 心身を蝕むこれらを気力で強引に鎮め、

 涙と鼻水を堪え懸命に立ち上がると、再度頭痛。

 それはデータ表示の前兆。

 何か打開策が?

 一縷の期待を込めて参照を促すと、


 

 敵対数:災害級妖魔王一体。

 脅威度:SS~SSSクラス。

 属 性:陰・魅・淫

 対 応:unknown

 戦力差:推定戦闘値800以上



 今更ながら、絶望的な解析結果が表示されるのでした。

 


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