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想像の斜め上を行く最悪の展開のようです

「ここが……」

「はい。今までの地下墳墓は言うなれば序章。

 この霊廟へ続く回廊を通ってからが本章。

 本格的なダンジョンになります」


 ゴツゴツした岩肌の上に薄く張り巡らされた漆喰。

 湿気とカビが不快度を増す墳墓内。

 一際大きい扉の前、しっかり舗装されているだけでなく、

 複雑な仕組みをした回廊が迷宮の様に広がってました。

 その扉の前で感慨深そうな感じで佇むルシウス様。

 胸中を占めるのはいったいどんな思いなのでしょう?

 思考共有により、こうしてる間も表層意識は伝わってきます。

 これからの道のりに対する不安、

 残してきたガンズ様に対する悔恨、

 王宮に巣食う者達に対する怒り、

 私に対する庇護欲求・若干の警戒(色々な意味で。鋭いですね。チッ)など。

 でもその奥底までは見通せません。

 何か女性的な面影が読み通せそうなのですが……

 深く頑なにプロテクトされてる為、全然伝わってこないのです。

 だけどルシウス様が孤独な想いを抱えてる事は充分理解出来ました。

 索敵系のスキルに反応が無い事を確認すると、私はそっとルシウス様の手を取ります。

 驚いた様にバッと顔を向けてくるルシウス様。


「大丈夫ですよ、ルシウス様」

「ユナ……」

「霊廟の最奥にあるという封印の要、聖鏡イデアリフレクター。

 そこに到るまでの道中は並外れた労苦を必要としますけど……

 ここまで無事に来れたんです。

 二人なら大丈夫ですよ、きっと」

「……そうだな。

 今は余だけではない。

 独りではないのだな。

 これから先も頼りにしてるぞ、ユナよ」

「お任せください!

 A級クラスのダンジョンとはいえ、

 ルシウス様と私の力があれば突破は容易です。

 ただ霊廟の玉座にて主の帰還を待ちわびる……

 金毛九尾の狐だけには注意しなくてはならないですけど」

「それは何者だ?」

「確か元はこの禁忌の洞窟の最奥、封ぜられし霊廟の主。

 いにしえの皇<抗えし君>の側近だった者です。

 現世に現れては傾国の美女とも云われる美貌を駆使し、

 時の権力者を骨抜きにする事により贅を貪ってきました。

 ただ<抗えし君>だけは別だったようですね。

 生前は本心から仕え、

 その没後も共に在りたいと自ら志願し霊廟に参ったそうです」

「なるほどな……

 ランスロード建国以前の話だが、ここにも強大な王国があったと聞く。

 その皇がここの主なのだな」

「はい。ただ生前は暴君であり、その暴政と圧政により民衆を苦しめました。

 けど義憤に駆られた臣下により隙を突かれ討たれたそうです。

 ですがその怨念の深さ故、強大な死霊皇として復活したと。

 一国を相手に死霊術を駆使し反旗を翻しましたが……

 当時百人の勇者にして12英雄の一人であった私の先祖、

 光明の勇者によって再度討たれ、封印されてます。

 父様の話では私達ノルン家はその封印を見守る役目も担っている様です」

「ああ。叔父上の話でも同様の事は聞いていた。

 10数年前に復活し掛けたのを先代勇者イズナと共に再封印したというのも」

「はい。ですからしばらくは封印は安定してると思います。

 よって私達が警戒しなくてはならないのは霊廟に仕掛けられた罠もですが、

 九尾の狐……白面の者とも呼ばれる強大なあやかしの方です」

「なるほどな。

 では最大限に配慮しながら探索を続けよう」

「まあ広い霊廟の中、玉座以外で遭遇する確率は皆無に近いですけど」


 私は苦笑しながら霊廟へ続く扉を開け放ちます。

 そして硬直しました。

 全身の毛が総毛立ち、瞬時に喉が干上がります。

 激しく心臓が脈打ち、息が上手く吸えません。

 手を繋いだルシウス様も同様のようです。

 何故なら、扉を開けた回廊の先には……


「ようこそ、定命なる者達よ。

 さっそくで悪いのじゃが……

 妾の主様の為、その命を差し出してほしいのじゃ」


 蠱惑的な微笑を口元に浮かべた、

 九本の尻尾を生やした妖艶なる絶世の美女が佇んでいました。



 扉を開けると、そこにはラスボスがいました。

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