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傍から見るとお馬鹿さんのようです

 精神感応テレパス……それは他者の思考を読む事が出来る能力です。

 他人の心を読めるなんて、一見便利そうな能力ですが……

 果たしてどうでしょうか?

 だって人の心は綺麗なものばかりではないから。

 むしろ汚い側面の方が多いでしょう。


 笑顔で語り掛けてくる友人が自分を恨んでいたら?

 誰にでも優しい憧れのあの人が、表記するのもおぞましい事を企んでいたら?


 人の心は複雑怪奇。

 底の見えない深淵のごとく謎に満ちてます。

 人の心とは善と悪どちらが本質なのでしょう?

 おそらくその天秤が傾く事はあっても、完全にバランスを崩す事がないのが普通の人なのでしょう。

 余談になりますが、これは転生する前……まだ中学生だった頃の話です。

 偏った考えを持つ先生による偏った授業で習った話でしたが、

 私は孟子の唱える性善説より荀子の唱える性悪説の方が理解しやすかったです。

 よく誤解されやすいですけど……

 性善説=人の本性は善であり、人を信じるべきだという考え方。

 性悪説=人の本性は悪であり、人は疑ってかかるべきだという考え方。

 ……ではありません。

 孟子曰く、


「人間は善を行うべき道徳的本性を先天的に具有しており、

 悪の行為はその本性を汚損・隠蔽することから起こる」


 とのこと。

 要約すると『人は生まれつきは善なるものだが、成長すると悪行を学ぶ』というのが性善説です。

 それに対立する荀子曰く、


「人間の本性は利己的欲望なるも善の行為は後天的習得によってのみ可能とする」


 とのこと。

 こちらも要約すれば『人は生まれつきは悪だが、成長すると善行を学ぶ』というのが性悪説になります。


 もっと簡単にいえば、

 残念だけど、人間は悪と呼ばれる概念を以て生まれるよ~

 でもだからこそ、自分を律して清く正しく生きなきゃね~

 というのが性悪説です。

 雑用を拒否しない私を何かと便利に扱おうとする人々の中で、

 私は確固たる信念として共感し納得しました。

 転生した今となっては懐かしい思い出です。

 とまあ、およそ30行近く何を述べているのかと言うと、


「おい、誰かいるのか?」

「なんじゃ、隠れておらんでこっちに来ぬか」


 戸口に隠れる私に二人が気付いたからです。

 この心理描写はただ単に動揺してるんです。

 深い意味はないのです。

 あ~どうしましょう。

 こんな重要な事を盗み聞きしてたと知れたら、どんなお叱りを受けるのやら。

 焦りからか、まるで走馬灯の様に脳内思考速度が速くなっていきます。

 切っ掛けは先程のガンズ様によるルシウス様テレパス宣言。

 衝撃の事実に思わず声が出ちゃいました。

 隠行系スキルを駆使し、コソコソと聞き耳と覗き見をしてた私。

 見つかれば弁解の余地はありません。

 よ~し、こうなれば起死回生の秘策。

 古典的ですが、ここはシンプルな……


「にゃ、ニャ~ン♪」


 人生最高の猫真似をして誤魔化します。

 声色だけでなく手招きまでして。

 傍から見ればお馬鹿さんですが、私は真剣なのです。

 通れ……通り抜けろ、私の魂……

 今だけは外道な猫耳メイドなのだ……

 諦めにも似た気持ちの中、それでも想い(妄想)を貫きます!


「な~んだ、ネコか」

「ふむ。仕方ないのう。

 ところでカルよ、先程の話の続きじゃが……」


 何事もなく会話に戻る二人。

 やっ……やった!

 私はついにやり遂げましたよ!!

 ブランクがあるとはいえ、元S級冒険者相手に誤魔化しが通用するなんて!

 うふふ……自分の才能が怖いです★

 さ~て、それでは続きを……

 と思った瞬間、


「そんな訳があるか! この大馬鹿者め」


 ポカッと、鋭いツッコミの様に頭をはたかれました。

 け、気配はしなかった筈なのに!?

 頭を押さえながら慌てて後ろを振り返れば、

 そこには尊大でありながらも高貴さを纏った美しい天使の姿。

 驚く私を呆れた様に見詰めながらもどこか優しい目線な、

 パジャマ姿のルシウス様がいらっしゃるのでした。




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