色々と想定してしまうようです
虚ろなる幻魔。
それは精神生命体である魔族のうちでも、特に変わり身の術に長け、
人間に憑依……同化し、まるで本人と同じように振る舞うといいます。
いいえ、この表現は正確ではありません。
生命の構成素たるマテリアルを自在に変動できるだけでなく、
霊的な設計図であるアストラルをも侵食するこれらは、
おぞましい事に本人の記憶や存在意義すら模倣します。
分かりやすく言えば、
本人そのものを魔族に作り変えるといえばいいでしょうか。
これが如何に恐ろしい事か理解できるでしょうか。
愛した隣人が記憶を共有するバケモノに成り代わる。
なまじ姿カタチすらそのままなのが余計にタチが悪いです。
心を許した存在による凶行。
親しき者が刃を向けてきた際、絶望を抱かずにいられるでしょうか?
更に人は群れで生きる生き物です。
そのトップや重鎮が突如豹変してしまった場合、誰が異議を挟めるのでしょう?
100年前の大戦時はこれらの暗躍により、団結すべき人々が疑心暗鬼に駆られてしまったという史実があります。
無理もないかもしれません。
背中を任せる戦友にいつ刺されるか分からない状況では誰だって戦えません。
普段頼りにしてる指揮官がおかしな事を言っても、中々疑う事は出来ません。
それが喩え理不尽な命令であろうとも。
故に起こる悲劇。
虚ろなる幻魔が最悪の悪夢と呼ばれたのもこれが起因です。
勿論当時の人達も対策に奔走したそうです。
しかし結果は全滅。
魔術協会を中心とし結成された対策チームでしたが、
害意感知や記憶探査などの魔術を駆使しても判別は行うことは叶わなかったそうです。
それどころか各都市では私の世界でいうところの魔女狩りにも似た暴動が起こったとの事。
しかもそれを止めるべき衛視達の中にすら、虚ろなる幻魔が潜り込み虐殺を企てるという状況。
命令系統を寸断するだけでなく混乱をもたらす敵。
為政者にとっては悪夢の化身と呼ばざるを得ません。
不思議と辺境では騒動は起きなかったようですが。
このままでは人類の敗北は必至だったでしょう。
ただ人類サイドにとって幸運だったのは、
聖者と呼ばれる人の存在です。
突如表舞台に現れた彼ですが、その保有するスキルは絶大でした。
精度100%の絶対看破。
虚ろなる幻魔は化身してる本人を斃すまで本性を見せないのが厄介ですが、
彼の指示した人は討伐後、必ず本性を曝け出したそうです。
その他噂話程度の情報ですが……
「今でこそ禁忌の洞窟の封印の要となってはおるが、
王家に伝わる三種の神担武具のひとつ。
聖鏡イデアリフレクターは物事の本質を世界情報から導き写し出す御力もある。
かの聖鏡の前には小賢しい書き換えなど無効だ。
虚ろなる幻魔であろうと、必ずや正体を現す。
それは既にかの大戦時に実証されておる」
「大戦時の王都に混乱が無かったのはそれが理由か……」
「ああ。王族のみの秘匿情報とされておったがな。
……公開されれば聖鏡を狙う輩が続出する故に」
「それは仕方ない。
それほど当時は混迷を極めていたのだろう。
ならばせめて為政者の中に虚ろなる幻魔がいないかどうか、
諸国を招集した会議の時にでも判別できる方がいい。
万物を救う事は出来ないからな」
「当時の王であったワシの先祖、リヴィウス王もそう判断したらしい。
その甲斐もあって主だった為政者は無事だったからのう。
地方領主クラスは大分やられたらしいが」
「幸い奴等の数が少なかったのが救いか。
それで、話は戻すが……どうしてお前は気付いたんだ?
肉親でも見分けが尽かないほど奴等は巧みに成り代わるのだぞ?」
「ワシではない」
「ん?」
「気付いたのはあの子だ」
「まさか……」
「ああ。王家に伝わる力<思念具象>能力……
あの子、ワシの甥ルシウスの持つ力は……
可哀想な事に<精神感応>なのだ」
痛ましい口調で話すガンズ様。
告げられたその内容に、私は驚きの声が洩れるのを止められませんでした。
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