口元を抑え驚きを堪えるようです
肩で息をし、激昂する父様。
憤る思いの丈をぶつける様にガンズ様を睨みつけます。
ガンズ様の方はさもそれが当然とばかりに落ち着いていますが。
私や母様や兄様達など、家族の事が絡まなければ父様が感情的になる事はあまりありません。
そんな理知的(?)で穏やかな父様があそこまで憤慨する。
封印された霊廟とやらで何があったのでしょう?
更に秘宝とは?
アラクネを通して得た情報の断片を幾つか思い浮かべながら、話の続きに耳を澄ませます。
「そう感情的になるな、カルよ」
「ならざるを得ないだろうが!
復活した死霊皇を叩き返す為、どれだけの犠牲を払ったと思ってる!」
「そうじゃな……
王命とはいえ、アレは確かに浅慮な行いじゃった。
アイツは最後まで反対していたのにのう」
「この禁忌の洞窟の最奥、封ぜられし霊廟の主。
いにしえの皇<抗えし君>……
わたしたちノルン家はその封印を見守る役目も担っている。
曽祖父であり光明の勇者であった先祖の遺言で。
無論、失われた宝を求め裏に潜る輩は少なくはないが……
封印が正常に効力を発揮してる今、強大な魔は現世へとは出れない」
「ああ。全ては……
王家の秘宝、聖鏡の御力によってな」
「そうだ。だが最近は封印に綻びが出来てる。
先日も村長の依頼で王都の腕利き冒険者が調査に赴いた。
幸い封印術の使い手たる聖女のお蔭でどうにか事無きを得たが……
あくまで一時しのぎにしか過ぎぬ。
そんな時に要たる秘宝を失ったらどうなる!?
10年前の再来、
いや……それ以上の災厄を招くだろう。
あの時は大賢者たるアイツがいた。
だからこそ未然に挑み、最小限の犠牲で潜り抜けた。
今度は無事では済まない」
「分かっておる」
「それに皇の側近を忘れたか?
金色九尾……白面の者と呼ばれた彼の者は未だ存命だ。
封印の境、地下墳墓迷宮の玉座で皇の帰還を待ちわびている筈……」
「分かっておる!!」
閉眼し怒鳴るガンズ様。
その様子に流石の父様も黙ります。
「そんな事は……
アイツを救えなかったワシが、一番理解しておる……」
「……すまない、ガンズ。
言い過ぎた様だ。
この事はお前が一番理解している筈なのに……」
「いや、忠告はありがたい。
ただ今回はどうしてもあの鏡の御力が必要なのだ」
「何故だ?
お前の力があれば、大概の事はどうとでもなるだろう?」
「……他言せぬと誓えるか?」
「何を今更、水臭い。
わたしとお前の仲だろう? 早く言え」
「ならば話そう……
実はな、カル」
「何だ」
「王位継承者の中に……
虚ろなる幻魔がいる可能性がある。
しかもかなりの確率で」
「なっ!!」
驚きの声を上げる父様。
私も口元を押さえ、驚愕の声をあげないよう堪えるのでした。
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ちょうどタイムリーにユナの先祖、光明の勇者アルのシリーズも更新しました。
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