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休憩らしいです


 兄様が会計を済ませてます。


「支払いはどうする?」

「カードでお願い出来ますか?」

「おうよ」


 兄様が手渡したカードを受け取り、ゴランおじさんが何やら魔力水晶を操作してます。

 そう、この世界にはカード払いがあるんです!

 何でも百年前の大戦後より普及した文化らしいです。

 百人の勇者と呼ばれた人達の功績みたいですけど……

 幾分昔のことなので詳しくは分かりません。

 でも大金を持ち歩かなくてもいいという事で、商人さんには好評との事でした。

 カードはギルドの所属メンバーカードを兼ねてる事が多く、

 兄様が持ってるのは父様の持つ冒険者カードです。

 冒険者組合が発行する身分証明書で、各地の支部で依頼を受けるに必要なこのカード。

 生体認証だけでなく簡易支払いも可能なので人気があります。

 あらかじめ本人が設定した額面までなら引き落としも出来るので兄様が代行してるのでした。

 払われる貨幣は信用通貨でもある特殊魔力通貨らしいです。


「ほら、これで大丈夫だ」

「ありがとうございます」

「あと……俺からも差し入れだ」

「え? しかし……」

「ユナだけでなく、シャスも立派なもんだ。

 先生たちによろしく言っておいてくれ」

「いいんですか?」

「遠慮するな。

 ほら、持って行け」

「では……」

 

 渡されたのはストローが刺さった果実です。

 ココナの実は果汁がその中にたっぷり内包され、ほのかに甘い口当たりで冒険者のおやつとしても好評です。


「「ありがとうございました!!」」


 兄様と二人、お礼を言ってお店を出ます。

 おじさんはそっぽを向いてますが、顔が赤く、

 おばさんは元気に手を振ってくれました。

 村の中心部に向かい歩きながら、私達は顔を見合わせます。

 私達の手にはおばさんからいただいたクッキーとおじさんからいただいた果実ジュースがあります。


「何だかいっぱい頂いちゃいましたね、兄様」

「そうだね。あの人達もユナが行くと可愛くてしょうがないんじゃないかな?」

「そんなことは……」

「ボクだけならこんな戦果は得られなかったよ」


 そう言って苦笑するシャス兄様。

 は、まさか!?

 お使いに私を同行させたのはこれが目的?

 穿った顔で兄様を窺うと、逆光に浮かぶシャス兄様の口元が歪んだ半月を浮かべてる気がします。

 恐るべし、シャスティア・ノルン。

 弱冠6歳にして交渉術の機微を心得てます。

 でもミスティ兄様みたいにはならないことを祈るばかりです。


「じゃあせっかくだし、いただいて帰ろう。

 噴水広場のとこでいいかな?」

「はい!」


 兄様と共に村の中央にある噴水にきます。

 この辺りまでくると探索を終えた冒険者さん達の姿もちらほら見られ、広場に設置されたベンチで休息を取る姿が見られます。

 周囲には屋台も何軒か立ち賑やかな感じです。


「あ、兄様! こっち空いてます!」

「ユナ、走らなくても大丈夫だよ」


 混み始めたベンチに空きを確認。

 ダッシュしてすぐに確保します。

 兄様は分かってません。

 せっかくなら一番いい場所で食べたいじゃないですか。

 私が確保したこの場所は広場が一望でき、かつ木陰で涼しいので最高の休憩場所です。


「じゃあまず手を洗って、と」


 兄様と場所取りの後、噴水で手を洗います。

 ハンカチで手を拭き取り、ベンチに腰掛け袋を開けます。

 あま~い香りが否応なしに食欲を誘ってくるのです。


「じゃあおじさんとおばさんに感謝して……

 いただきます」

「いただきま~す」


 ガサゴソ音を立てながらクッキーを頂きます。

 少し焦げ目があり苦みがあります。

 ですが砂糖の甘さが丁度それを打ち消し合いハーモニーを奏でます。

 幸せな協奏曲にジュースの合いの手。

 口の中で指揮者が変更し新しい曲を待ち望むようになりました。


「食べてる時のユナは真剣だね」

「だって美味しいんです」

「まあ確かにね」


 雑談を交えた至福の時間。

 兄様と共ににこやかに過ごしてると、


「な~にやってるんだよ、お前ら。

 ここはオレ達の場所だぞ」


 ……ウルサイお邪魔虫がやってきました。



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