開幕
空が落ちてきた。
それは比喩のようなものではない。ただ純粋に、学校の屋上で空を見上げていた俺はそう感じ、そう表現したに過ぎない。
空が落ちるなんてことは天と地がひっくり返っても起こることがない。そう言われるだろう。……だが、今は天も地もひっくり返ってしまっているのだから、それも仕方がないのだろう。
俺はふと上を見上げる。
もはやどちらが地面で、どちらが空かなどわからなくなってしまったが──それでも、自分の足が着いている場所こそが地面なのだと思い、首を動かした。
────2015年8月1日人類は滅亡する。
……ああ。そんな予言もあったっけ。
俺は一人、漆黒に包まれた空を眺め、思いふける。
あの日、大切な人が死んで世界は狂い始めた。親友とは離れ離れになり、俺自身何をすればいいのかがわからなくならなくなった。生きがいを失い、目標を失い、道に迷った俺。どうせ終わるなら、こんな狂ってしまった世界と一緒に消えてしまってもいいじゃないか。そう考えてしまう。
光を失い、闇に飲まれ続ける空。
それがゆっくりと世界を──俺たちを包み込んでくる。
「……これでやっと逢えるな。──紅葉」
ブツン──
古いテレビの電源を切ったかのように、俺の世界はブラックアウトをする。