来(きた)る親友と知らせ
「ふ〜、終わった」
陽も暮れ農作業も一段落した
なので俺は道具を持って帰ることにした
四年掛けた田畑は始めた時に比べて格段に収穫量を増やしてくれた
これなら食べる分を除いても洛陽で売って金にすることができる
そんなことを考えていると家が見えてきた
四年前に住むことにしてから、素人である自分で造った家だ
だから、四年たった今でも補修中でもあり、部屋数を間違えたため増築中でもある
「ん?」
そんな家の前に馬が一頭繋がれている
俺は馬を持っていない
そしてここに訪れるのは一人しかいない
大体の予想をつけながら家に入ると
「やぁ、久しぶりだね
いなかったけれど、いさせてもらってたよ」
文官服を着た、髪を肩で切り揃えている黒髪の女性がいた
「それは別にかまわないけど何の用だ?文
仕事の依頼か?それとも書類整理の手伝いか?」
「…無々(むむ)、君は友人がただ遊びに来たという選択肢は無いのかい
…まぁ、確かに頼みに来たのは間違いのだけどね」
こいつは盧植、字を子幹、真名を文
なぜか女性だったが、蜀王の劉備や白馬将軍の公孫賛の師だ
そして俺は姓を史、名を有、字を羽、真名を無々と名乗っている
そして文は数少ない俺の友人だ
「で、話してくれよ」
「君は、せっかちだね
まぁ、いいよ
とりあえず君は最近どんな噂を聞いたかな」
「噂か?…天の御使いぐらいだな」
全く知らない事だったからかなり印象に残っている
「あちこちに賊が発生しているという噂は聞いたことはないかな?」
「あのな、そんな噂聞いたことがない日は無いぞ」
「ん?あぁ、すまない
言い直そうか
黄色の布を頭に巻いた賊があちこちに出没しているという噂は聞いたことはないかな」
「…いや、ないな」
聞いたことはない
だけど中学時代好き好んで読んでいたから覚えている
お前がどうなるのかさえも…
「そうかい、とにかく僕はその賊の討伐を任じられてね
軍を率いることになった
そして、ここからが僕が君に会いにきた理由だ
僕ともに来て欲しい
報奨も戦果に応じて払うよ」
文は俺の数少ない親友だ
そして言い尽くせないほどの恩も義理もある
そしてこいつがこんなことを言うときはかなりマズイ状況にいる
……それなのに、こいつは……
「助けてくれ、それだけで俺はお前になら手を貸す
見返りなんていらない
お前ならわかってるはずだろ」
「確かに君ならそうなんだろうね
でもね、それをやったら僕ではないよ」
「はぁ…、わかった
なら、いくつかの条件と期間を飲んでもらうぞ
さすがに準備は必要だ」
「ありがとう、頼りにしているよ《仮面の用心棒》」
「…その名前ではやめてくれ」
とにかくこいつが牢に入るなんていう未来を回避しなくては俺が俺自身を許せない