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元被虐児童、軍で生きる 〜裂け目の先の日常〜  作者: ヒヨコのピヨ
本編・春坂智視点

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6/13

復讐のため

今日中に本編はすべて投稿する予定です。

後日談は、来週の金曜日までには出したいです。

「お前は、この世界の人間じゃないな。──“表”側の人間。そうだろう」

「……あぁ。そして俺と対になるのが、アンタだ」


短い沈黙。分かっていたはずでも、互いに緊張は残っていた。


「なら、疑問が二つ出る。一つは、もうほとんど分かった。だが、もう一つが確信に至らなくてな」

「だろうね。単純な話だよ。逃げてる途中で、偶然“まだ誰も見つけてない裂け目”に落ちただけ」


自分自身と会話しているような妙な感覚がある。

言葉の流れが噛み合いすぎて、正直こわいほどだった。

藤宮はうなずき、わずかに目を細めた。


「なるほど……すべて察した。じゃあ次は、確認だ。大事なことだからな。──お前には、“帰りたい”という意思があるのか?」


問われるより早く答えていた。


「当たり前だろ。なにせ──」

「「復讐のためだから。」」


二人の声が重なった。

やはり、どうしようもなく“同じ人間”なのだと実感する。

藤宮は最後の確認に移った。


「それ自体は構わないが……今すぐ帰るのは無理だ」

「なんでだ?」

「今、裂け目は“表の世界”から物資を運ぶための重要なルートなんだ。すでに戦争は始まっている。それに……敵前逃亡は?」

「……銃殺刑、だろ」


そこは春坂も理解していた。

結局──戦争を終わらせるしかない。

その考えを見透かすように、藤宮は肩をすくめた。


「仕方ないから、俺がちゃんと評価つけて前線に送ってやるよ」


…正直、嬉しいような怖いような話だ。

死ぬ未来がチラつかないわけではない。


「しょうがないからさ。死ななそうな部署に、いい感じに手配もしとくよ」


何も言ってないのに気持ちを読まれるのは、あんまり気分の良いものじゃない。

けれど──頼もしくもあった。


「お前を拾ってくれた春坂さんに、感謝しなくちゃな」


___________________________________

そして数日後。

”表”の世界の藤宮創一は、復讐が完了するまでは「春坂智」を名乗ることを誓った。

そして北方面へ向かう大隊の一員として、戦地へ向かうことになるのだった。


春坂智は、整列した隊列の最後尾に並んでいた。灰色の空の下、軍艦が港に静かに浮かぶ。波の音と金属が擦れる音、兵士たちの足音が規則正しく甲板に響く。


「……ああ、いよいよか」


春坂は心の中で小さくつぶやく。胸の奥には、抑えきれない緊張と期待が入り混じっていた。北方の前線へ向かう船の中、彼の周囲には同じように無言で整列する兵士たちの背中が続く。

長時間の航海の末、船は凍てつく北の港に到着した。港には既に数個大隊が上陸の準備を整えており、隊列は自然と塹壕へ向かって移動する。春坂は義務感と覚悟を胸に、列の中で姿勢を正した。

塹壕は、寒さと湿気に包まれ、薄暗い土の匂いが立ち込めていた。隊員たちは互いに小声でやり取りしながら、装備を確認し、注意深く周囲を見渡す。春坂も心臓の鼓動を抑え、呼吸を整えた。戦場はまだ始まったばかりだが、その緊張感は日常の比ではなかった。

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