どうやら悟ったようだ
今度は首が……!
色々と痛いヒヨコでスミマセン!
後日。春坂は、藤宮の下へ向かっていた。資料館で調べたいものも調べられたし、ほとんど確信へと至っていた。
そして、その最後のピースを揃えるために必要だったのが、藤宮だったのだ。どうして分かるのか。きっとそう聞かれるだろう。理由は一つ。
自分の事であるから、だ。
緊張した面持ちで扉に手を添える。そして、ノック。
コン、コン、コン。
「春坂一等兵です。」
「どうぞ」
「失礼します。」
ここからが正念場だ。
「あなたの親の写真を見せていただけませんか?」
「なぜ持っていると踏んだ、と聞いたら?」
「自分のことが分からないほど無知ではないですよ」
そう答えるやいなや、藤宮は笑い出した。
藤宮の笑い声が、資料室の静けさに微かに響く。
その表情は穏やかで、どこか余裕さえ感じられた。
そして、藤宮は無造作に懐から一枚の家族写真を取り出した。
そこに写っていたのは、3人の姿。顔は多少変わっていたが、あの時の記憶と重なる何かがあった。幼い日の、自分を叱責する大人の影。逃げるしかなかった路地裏。雨に濡れたアスファルト。追いかけてくる足音。
胸の奥が、突然ざわつき始める。
まるで閉じ込められていた過去の映像が、一気に押し寄せるようだった。
春坂は息を呑み、手をテーブルに置き、視線を落とす。
「……これは……」
言葉にならない声が、かろうじて漏れる。
分かってはいたのだが、やはり耐えられそうにない。
心の中で無理やり押し込めてきた記憶が、目の前の写真によって呼び覚まされ、吐き気とともに胸を締め付ける。
藤宮は春坂の変化に気づいたが、すぐには口を開かず、静かに待った。
「……ちょっと、外の空気を……」
春坂はつぶやき、顔を背けて資料室を出る。
廊下に出ると、冷たい空気が肺を満たし、わずかに落ち着きを取り戻す。
でも、胸の奥のざわつきは消えない。
写真が触れた過去の記憶は、もう二度と完全には押し込められないことを、春坂は悟っていた。
振り返ると、資料室の扉の向こうに藤宮が立っていた。
声はかけてこない。ただ、春坂を静かに見つめ、その瞳の奥には──何かを察したような光があった。
春坂は小さく息をつき、扉を閉める。そして迷いなく藤宮へ歩み寄った。
「……何か悟ったのか?」
階級差を考えれば、軽々しく話しかけるべきではない。藤宮の声音には、注意を促す色も混じっていた。
だが、もうそんな段階ではなかった。
「お前は、この世界の人間じゃないな。──“表”側の人間。そうだろう」
驚くことに、本編はもう折り返し地点に立っています。
いくら気まぐれとはいえ、10000文字は少なく感じますね。




