上司と食事
画面を見すぎているせいか、頭が少々痛いです(ご心配なさらず。)
翌日も、その翌日も、更に翌日も、同じ内容の仕事を繰り返し行った。変わったことといえば、上司である藤宮との、オフの際の距離感くらいだ。
そして、この職場で働き続けて約2ヶ月。こないだやっと一等兵になった智は、早くから兵舎で目を覚ました。
日課の体力訓練を終え、シャワーを浴びて、汗でべたつく服を着替え、朝食をとる。後方勤務は、前線ほどの危険はないが、緊張感と責任は同じだ。
「今日から春坂一等兵には、新しい任務を割り振る」
藤宮の声に従い、智は書類の束を受け取る。整理すべき物資の数、伝令ルートの確認、通信機材の準備……
次々と作業を進める智の手は、少しずつ迷いが減っていった。
午前中の業務を終え、今朝言われた通り新しい仕事の内容の指示を仰ごうと部屋を移動する。
新しい作業場に入ると、藤宮が書類を整理していた。
智はその背中を見て、一瞬、胸がざわついた。
体格も、髪型も、服装も、何もかも違うはずなのに——
まるで自分の姿が目の前にあるかのような感覚に襲われる。
「……あれ?」
智は小さく呟き、思わず足を止めた。
違和感は説明できない。ただ、胸の奥で、言葉にならないざわめきが生まれる。
なぜだろう。この既視感はこれで何回目かも分からない。それほどに、藤宮中尉に違和感を持つ回数が多いのだ。
同僚の目も気にしながら、智は深呼吸し、何とか平静を装う。
藤宮は振り返り、淡々と書類の指示を出す。
智は敬礼し、作業を始める。しかし、視線の端に映るその人物の所作や雰囲気が、どうにも引っかかって離れなかった。
違和感は確かにある。だが、今は仕事に集中するしかない。
智はそう自分に言い聞かせながらも、心の奥のざわつきは、わずかに消えることはなかった。
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新しい任務が割り振られてから数か月。
兵舎の食堂は、昼休みのざわめきと匂いで満ちていた。上等兵となった春坂は、大尉へと進級した藤宮と隣の席に座り、昼食のパンとスープを前に小さく息をつく。休暇が重なったとはいえ、普段の業務中には見られない、少し柔らかい表情の上司を前に、妙な緊張感があった。
「昼飯くらい、一緒に食べようと思ってな」
藤宮は自然な口調で言い、パンを手に取る。
春坂も同じようにスープをすくいながら、心の中で違和感の理由を整理していた。
好きなものや嫌いなものの嗜好が、微妙に似ている──完全に一致しているわけではないのに、妙に納得できる感覚。
「……ところで、藤宮さんは子供の頃って、どういう家庭だったんですか?」
春坂は思い切って聞いてみた。自然と出た質問だった。
藤宮は少し間を置き、スープを一口すすってから口を開く。
「……まあ、あんまり褒められた家庭じゃなかったな。小さい頃、親から虐待を受けてて、逃げようとし
たこともある。けど失敗したんだ」
春坂の胸の奥に、じくじくとした感覚がよみがえった。
どこかで見たことのある、よく見ていた夢。暗い路地、雨に濡れたアスファルト、追いかける足音……
藤宮は視線を少し落とし、続ける。
「それで、復讐のためってわけじゃないけど、自分の力でどうにかするには軍に入るしかないって考えた。そしたらこうなった、って感じだ」
春坂は自然と吐き気を覚え、唇を噛みしめる。
掘り返したくない記憶を、あの瞬間、無意識のうちに掘り起こされた気がした。
「……すみません、ちょっと……」
そう言って立ち上がり、春坂は食堂を出た。
背後で藤宮が微かに唇を噛み、肩をすくめる。春坂の様子に何かを察したのかもしれないが、問いただすことはなかった。
廊下の冷たい空気を吸い込むと、春坂は覚悟を決めた。今まで無理やり理解しようとしてきた、藤宮への既視感。この正体を確信へと至らせるために、兵舎にある資料館へと直行した。
ストーリーの進行が早いのは分かっているのですが、思いつかないので数ヶ月フッ飛ばしまくりました。




