とある記者の軌跡
思ったより早めの投稿となりました。
近隣住民から「空き家のはずなのに、中から叫び声が聞こえる」という通報が入った。
その知らせを受けて、若手記者の俺は「何かの騒動か、あるいは失踪事件かもしれない」と軽い気持ちで現場へ向かった。
だが、現地で確認した家の名義を見た瞬間、その軽さは一気に吹き飛んだ。
——藤宮家。
数年前に虐待疑惑が浮上し、その直後、家族全員が姿を消したことで世間を騒がせた未解決事件だ。
そんな家の内部には、説明のつかない光景が広がっていた。
床には水が落ちたように濡れた跡。
軍用規格ではない見慣れない銃。
伍長を示す階級章。
そして失踪者のものと思われる靴跡。
誰も住んでいないはずの家で、いったい何が起きたのか。
叫び声が本当にあったのだとしたら、その主はどこへ消えたのか。
不気味さだけが、じわじわと皮膚に張り付く。
そんな中、追加のニュースが入った。
「藤宮夫婦が遺体で発見された」
という衝撃的な速報。
詳細は伏せられているが、報告では“撃たれた”形跡があったらしい。
藤宮家を巡る謎は、急激に深さを増していく。
さらに独自に取材を進めていく中で、警察内部の情報が耳に入る。
現場付近で“軍装らしき男”が倒れており、肩には向こうの世界の“大尉”を示す階級章が付いていたという。
男は不法侵入の疑いで拘束されたが、黙秘を続け、身元も明かさない。
一部の捜査員は「裂け目から来た者ではないか」と噂しているらしい。
そんな断片的な情報を集めるうち、俺の中で静かな違和感が膨らみ始めた。
叫び声がした空き家で見つかった“伍長”の名。
拘束された“大尉”の男の名。
藤宮夫妻の“失踪した息子”の名。
——すべて、「藤宮創一」。
なぜ同じ名前が複数出てくる?
偶然とは思えない。そして、捜査官の噂も繋がる。でもなぜどちらも軍人なのだ?
疑問が疑問を呼ぶ。
これは単なる事件ではない。何か、もっと深いところで繋がっている。
記者としての好奇心は、いつしか個人的な執念に変わっていた。
「この事件の奥には、必ず何かがある——」
そう確信した俺は、拘留されている“大尉の男”への取材申請を提出した。
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重い鉄扉をくぐる。
真相に近づくため、目の前にある闇へ足を踏み込むように。
次回は”藤宮創一大尉”の視点です。




