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喪失と幼馴染 3

そこはかとない達成感を覚えながら寝る支度を済ませてベッドに潜り込んだ。

アルバムを見てもらうってことは、うちへ理央を呼ばないとだよな。

俺の部屋に理央が来るのか。

またあの観覧車の時みたいにちょっといい雰囲気になったりしないかな、今からソワソワしてしまう。

言っておくが、下心なんてないぞ?

これは俺達がループから抜け出すために必要なことだ、だからそれ以外の期待なんてしていない、微塵も無いからな!


呼ぶのは今週末のデートの後にしよう。

以降の対策に関する話し合いも兼ねて、そう言えば理央も誘いに乗ってくれるはずだ。

繰り返すが下心はない。

まあ、二人きりで何かしらの間違いが起きないとも言い切れないが、その時はその時だ、うん。


はあ、理央。

こうして目を瞑ると瞼の裏にお前の姿が浮かんでくる。

理央、理央。

友達でいいから付き合ってくれ。

この先、ループが終わったとしてもずっと。


―――そして迎えた週末。


今日は、水族館ダブルデートだ!

前回の遊園地同様、集まった面子は俺、薫、理央、そして虹川。

今度も成功させるぞ、しまっていこう!


また適当に理由をつけて、薫と虹川をなるべくペアで行動させる。

俺と理央は後方見守り隊だ。

それにしても、今日も理央は綺麗だな。

水槽を見上げる横顔なんてあんまり美人でクラクラする。

やっぱりいい匂いがするし、ああ、好きだ。


「ほら見ろ健太郎、マンボウだ」

「ハハッ、変な顔してるな」

「そうだね、君に似ている」

「は?」


心外な俺に、理央はクスクスと笑う。

可愛い。

今日の目的は薫と虹川を仲良くさせることだが、それはそれとして俺達もデートだ。

そのつもりでいるくらいは構わないだろ?


「なあ理央、後でさ、お揃いで何か買わないか?」

「何故?」

「そ、それはほら、俺達って運命共同体だし、勝利祈願だよ」

「これは勝負事ではないだろう」

「分かってるっての!」


相変わらずつれない。

―――けど、水族館を出る前に立ち寄った土産屋で、理央は俺と揃いのピンバッヂを購入してくれた。

二つを合わせると一つの絵柄になるヤツだ。


「ケンちゃん、今日、すっごく楽しかったね!」

「ああ!」


二人と別れた後の帰り道、薫も満足そうで何よりだ。

俺はバッグに付けたピンバッヂをそっと撫でる。

楽しかったな。

理央はピンバッヂをどこかに飾ってくれるだろうか。


「イルカのショーの時、ケンちゃんだけびしょ濡れになっておかしかったなぁ」

「まだ靴の中が濡れてんだぞ」

「だから私と美希ちゃんみたいにカッパを買えばよかったのに」

「理央も買ってなかっただろ」

「天ヶ瀬君はケンちゃんを上手に盾にしてたよね」

「ああ、ったく、なにが『君は大きいから具合がいい』だよ、おかげで余計にびしょ濡れだっての」

「ふふ!」


薫は土産屋で買ったハゼのぬいぐるみを撫でながらクスクス笑う。


「だけど、ケンちゃんと天ヶ瀬君があんなに仲いいなんて知らなかったな」

「そうか?」

「前は好きじゃないとか言ってたでしょ?」

「言ってたかなあ」

「もう、調子がいいんだから」

「ハハッ」


不意に薫が「怪しいなあ」と呟く。


「えっ」

「ケンちゃん、本当は天ヶ瀬君が」


うっ、なんだ?

まさか俺が理央を好きだって気付いたんじゃ。


「女の子に人気だから仲良くしてるんでしょ」

「はえ?」


ポカンとなる。

―――おい、待て。

まさか俺が理央のおこぼれ狙いだとでも思ってるのか?


「かッ、薫!」

「なあに?」

「お前なぁッ、言っていいことと悪いことがあるぞ!」

「だって」

「そもそも俺は理央をダシにしなくてもモテる! 格好いいからな!」

「へーえ」

「おい薫、今の撤回しろ」

「どうしよっかな~」

「薫!」


薫はケラケラと笑い出す。

おのれ、からかいやがって!


「ごめんごめん! 意外だったから意地悪言っちゃった!」

「意外ってなんだよ」

「なんでもないよ! お詫びに今日はカレー作りに行ってあげる」

「え、マジ?」

「何がいい? シーフード?」


そういや水族館に美味そうな魚がたくさんいたなあ。

薫のシーフードカレーも絶品なんだよな。


「よし、それで手を打つ」

「はいはい、それじゃ、スーパーに寄ってお買物しようね」

「おう!」


食い物で丸め込まれたような気もしないが、細かいことを言わないのがいい男ってもんだ。

今日もどうやら生き延びられそうだな。

まあ、晩飯に毒を盛られないことを祈ろう。

二度目のデッドラインも乗り越えたか。


次は一週間後。

前回、清野を誘ってスポッチョへ行った、何度目かの俺がまた薫に殺された日だ。

その前に理央を家に呼ぼう。

アルバムを見てもらうんだ、俺が感じた違和感の正体を突き止めるために。

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