表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/46

反転と幼馴染 2

「ええと、先週末のダブルデートが功を奏して、俺は無事に一週間後のデッドラインを生き延びたってわけだ」

「そうだね」


今朝、目が覚めた直後、特に信心深くもないが神に祈りを捧げたもんな。

脳内のイマジナリー理央も一緒に喜んでくれた、現実の理央は淡々としているが。


「薫と虹川さんは順調に仲を深めている、なので、作戦を第二フェーズに移行しようと思う」

「承知した、次はどうするんだ?」

「今回もダブルデートを計画している、映画なんてどうだ?」

「個人の趣味嗜好に左右される娯楽は評価が分かれるところだ、僕としてはお勧めしないよ」

「じゃあさ、理央はどういう映画が好きなんだ?」


どさくさに紛れてリサーチだ。

理央は「何故そこで僕の好みの話になる」なんて不審げだが、コホンと咳払いした。


「そうだな、芸術性の高い物語が好きだ」

「へえ」

「けれど悲劇的な結末は好まない、僅かでも救いがなければ娯楽として成立しないと僕は思う」

「なるほど」


ん? 待てよ。

それじゃ前に話したスプラッタホラーは理央の趣味に合わないんじゃないか?

取り敢えず一作目だけ見せて、続編もいけそうか確認するか。


「君はどうなんだ?」

「俺は面白ければ何でも見るよ」

「その面白いの基準を訊ねている」

「うーん、まず恋愛系はナシ、他人の恋路に興味ないからな、特に余命幾ばくもないってヤツは最悪だ、安直に感動させようって魂胆が透けて見えてむしろ腹が立つ」

「ふむ」

「SFやホラーなんかは結構好きだぜ、あとアクションとか、サスペンス系も悪くないな」

「幅広いな」

「アニメも見るぞ、そしてここが何より重要なんだが」

「なんだ?」

「俺もハッピーエンドじゃない物語はお断りだ」


理央はきょとんとして、不意にクスクス笑いだす。


「君、それは矛盾だろう」

「なんで?」

「他はともかく、ホラーにどんな救いがあるんだ」

「あれはギャグ枠だろ、特にスプラッタ、そもそもホラーに救いなんか求めねえよ」

「現実にそういった状況に置かれているというのに、豪胆なことだな」


お、俺のはホラーじゃないぞ。

どちらかと言えばサイコサスペンスとかそっちだろ。

まあ死に方というか殺され方は若干ホラー寄りではあるが。


「まあいい、なるほど、好みが似ている君とは有意義な映画鑑賞ができそうだね」

「おっ! 約束覚えていてくれたのか!」

「まあね、だが今する話はそれじゃない、既に脱線し過ぎだ」

「ちぇッ」


ガードが堅い。

けど、少しずつ理央のことを知っていけるのは楽しい。

俺のことももっと知って欲しい。


「じゃあ今回はスポッチョにでも行くかな」

「スポッチョ?」

「スポーツができるアミューズメントパークだよ、結構楽しいぜ」


よく一緒に行くのは清野だな。

朝稲や杉本も結構楽しんでくれる。


「なるほど、チーム戦にでもすれば効果的に仲を深められそうだ」

「だろ?」

「ではそこへ行こう、今回も人選は任せる、抜かりなくやれよ?」

「了解、任せとけって」


やったぜ、これでまた理央とデート! もとい、薫と女の子の仲を取り持つぞ。

チーム分けするってことは、薫とその子で、俺と理央だよな。

よし、キメるぜ。

俺に対する理央の好感度も底上げてやる、しまっていこう!


「ところで君、運動はそれなりだったか」

「体動かすのは好きだよ」

「なるほど、立案者の君が無様を晒さないよう、精々励みたまえ」

「ふふん、見てろよ理央、当日は俺に一目置かせてやるからな」

「それはどうだろうね」

「なんだと、今の言葉覚えておくぞ、覚悟しておけ!」


理央は「はいはい分かった」なんて俺を雑にあしらう。

まあ、今のところ世話になってばかりでまったく格好付かないからな。

遊園地ではちょっといい雰囲気だったりもしたが、どうも俺ばかり好きになっている気がする。

ちぇ、今度のデートで汚名返上だ。

俺にだって少しは見どころがあるってことを分からせてやる。


話し合いが一段落ついて、飯も食い終わり、予鈴が鳴ったから教室へ戻る。

その途中で薫たちとばったり鉢合わせた。


「あれ、ケンちゃん」

「天ヶ瀬君も一緒なんだ、二人でお昼食べたの?」

「おう」

「健太郎に相談を持ち掛けられてね」

「相談?」


首を傾げる薫に「後で話すよ」と告げる。

お前にもっと友達を増やして、俺を殺そうなんて考えないようにしてやるからな。

―――あんな真似をした薫もきっと幸せにはなれない。

俺だってもう殺されたくない。

お互い不幸になるだけの結末は前回で終わりにしよう。

それに、俺は笑っている薫が好きだ。

『嘘吐き』なんて泣きながら俺を詰って殺す薫の姿を、これ以上見たくない。


「分かった、でも、隠し事は無しだよ?」

「ああ、当たり前だ」


薫は満足そうに頷く。

理央にも目配せすると、軽く肩を竦めていた。

よし! 次回のダブルデートも必ず成功させるぞ!


そしてまた週末を迎えた。

今日の行き先は予定通り、スポーツアミューズメントパークのスポッチョだ。


「よっす、健太郎!」

「清野、来てくれたな」

「当然!」


今回誘ったのはクラスメイトの清野。

理由は虹川同様、薫と接する機会が多いからだ。

清野は虹川より若干ガサツだが、面倒見はいい。

それに明るくフレンドリーで、老若男女問わず好かれる性格をしている。


「しかしダブルデートだなんて、健太郎もやるねぇ」

「何が」

「私も含めて美男美女揃いじゃないか、まあ、健太郎は省くけど」

「おい!」

「にしても天ヶ瀬なんかといつの間に仲良くなったんだよ? 全然接点なかったのに」

「それはまあ、色々と」


当事者の理央と、薫まで苦笑している。

俺達の仲が良くて何が悪い、これからもっと仲良くなる予定だ。

それに理央は『なんか』じゃないぞ。

ついでに言えば俺だって十分イケている、どこまでも失礼な奴め。


「君達が来るのを天ヶ瀬と待っている間、周りから注目の的だったよ」

「だろうな」

「健太郎だって藤峰さんと一緒だとそんな感じなんだろ?」

「まあな」

「いいご身分だねぇ、羨ましい」

「悪いが薫はやらんぞ」


急に清野がプッと噴き出す。

薫も何故か驚いた顔をして、クスクスと笑い出した。

理央は微妙な表情だ。


「健太郎って本当に鈍いなあ」

「うん、ケンちゃんは昔からこうだよ」

「おっと、聞き捨てならないが、それはそれとして、藤峰さんも今日は一緒に思いきり楽しもう!」

「そうだね」

「よーし、スポッチョが私達を待っている!」


相変わらず清野は元気だ。

明るく前向き、さっぱりした性格で付き合いやすい。

薫も楽しそうにしている。


喋っていると直通のバスが来て、皆で乗り込む。

到着したそこはもうスポッチョの正面入り口前だ。

今日も賑わっているなあ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ