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期限と幼馴染 4

「僕にはよく分からないから、君に任せる」

「了解」

「でもさっきのような乗り物は願い下げだ」

「はいはい」


だったらなるべく刺激の少ないアトラクションにするか。

―――それにしても、改めて理央はスレンダー美人で通用する見た目だよな。

俺より肩幅や腰なんかも細くてしなやかだし、当然胸は無いが、尻なんかキュッと引き締まった美尻だ。

それにやっぱりいい匂いがする。

こうして並んで歩いていると、俺達カップルに見えたりしないだろうか。


「理央、あれどうだ?」

「馬だね」

「メリーゴーランドだよ、馬に乗ろうぜ!」

「可愛らしいが、少々子供じみていないか?」

「そこがいいんだって、ほら、行くぞ!」

「あ、待ってくれ、手を引っぱらないでくれないか、健太郎!」


楽しい。

どうしよう、俺自身が薫と虹川そっちのけで満喫してしまっている。

だってなぁ。

理央がいちいち可愛いんだ、こんなの完全に誤算だろ、若干嵌められたような気さえする。

驚いた顔、笑った顔、呆れた顔も全部可愛くて目が離せない。


「こ、この、コーヒーカップというのも、二度と乗らないぞ」

「アハハ!」

「笑い事じゃない、君、どういうつもりだ、バカみたいに回転させて」

「バカとは何だバカとは」

「バカだろう、君がバカじゃなかったためしがない」

「なんだと、俺よりちょっと成績が良くてモテるからって」

「その点に関して、君との差はちょっとどころではないと思うがね」

「こいつ!」


理央を捕まえて頭をグリグリする。

はあ、すっげえ楽しいんだが。

これで理央が女の子だったら、まさに理想のデートだ。

けど男なんだよな、惜しいなあ。

理央、お前は何でそんなに可愛いんだ、男でも俺が好きになったらどう責任を取ってくれる。


園内をあちこち歩きまわり、途中昼休憩を挟んだりもしたが、意外なほど薫と虹川に遭遇しない。

二人もどこかで親睦をしっかり深め合っているだろうか。

若干懸念が湧いてくるが、その度に理央の笑顔にクラクラしてそれどころじゃなくなっちまう。

まあ、あの二人なら心配は無用だよな。

俺が思うよりよっぽど上手くやってるだろう。


ちょっと休憩しようという話になり、見かけたベンチに腰を下ろした。

理央を待たせて、俺は軽く食えるものを買いに行く。


「ほら理央、ハンバーガーだ、食べたことあるか?」

「ない」

「よし!」

「君、今日はずっと僕をオモチャにしているだろう?」

「そんなことないって、ほら、食ってみろよ、こんな風にして食べるんだ」

「かぶりつくのか、口が汚れそうだ」


ハンバーガーにハムッとかぶりついた理央の一口は小さい。

モグモグと味わって、ゴクンと呑み込む。


「どうだ?」

「まずくはない」

「美味いだろ?」

「うん、美味しいよ」


理央のちょっとはにかんだ笑顔にグッとくる。

あーマジで女の子だったらなあ、ワンチャン女の子ってことはないのか?

―――まあ、無いよな。

当たり前だ、残念。


「ポテトも食ってみろよ、美味いぞ」

「これは分かる、味も知っている」

「へえ」

「僕だってジャンクフードに関する造詣がまるでないわけじゃない」


ポテトを一本齧り、理央は首を傾げる。


「ふむ、家で食べたものと少し違うな」

「お前が食ったのはどうせシェフが生の芋からカットして作ったとかそういうヤツだろ、それはジャンクって言わねーの」

「そうか」

「やっぱり口に合わない?」

「いや、君となら美味しいよ」

「え?」


ふと理央は俺を見て、想定外とでもいった様子でうっすら頬を染める。

それは俺の方だっての。

何だ今の、まさか脈アリ? 理央も多少は俺を意識している?


「いや、その」

「お、俺もッ!」

「え?」

「俺も、理央と食べるといつもより美味い!」

「そ、そうか、それは何より」


視線を逸らして明らかに狼狽えている。

マジか!

これは、脈アリと見ていいかもしれない。

い、いやいや! でも俺達男同士だし! だけど俺は理央ならイケると言うか、むしろ大歓迎と言うか!


「り、理央」

「健太郎」


戸惑う理央が可愛い。

―――イケる。

直感的に確信した、これはゴーだ!


「あのさ」


手を伸ばして理央に触れようとしたところで―――「あっ!」と聞き覚えのある声が響く。

内心メチャクチャ焦りながら振り返ると、向こうから虹川が手を振りながら走ってきた。

当然薫も一緒だ。


「二人とも、やっとみつけた、よかったぁ!」

「お、おお」

「天ヶ瀬君、もう気分は平気?」

「有難う、心配かけてすまない」

「こっちこそ気にしないで、それよりごめんね、カオルンと二人ですっごく楽しんじゃった!」


カオルン?

「ねっ!」と振られた薫も「うん、美希ちゃん」なんてニコニコ顔だ。

この短時間にそこまで親密になっているとは。


「あのね、美希ちゃんって凄いんだよ、さっきシューティングのアトラクションに乗ってきたんだけど」

「えへへ! 万点取って記念品貰ったんだ、ほら見て、これだよ」

「ぬいぐるみじゃないか、可愛いな」

「このパークのマスコットキャラクターなんだって」


虹川、嬉しそうだな。

薫も満足している様子だ、よし、作戦大成功だぞ!


隣の理央をこっそり見る。

理央も俺を見て微笑み返してくれた。


「ねえ、天ヶ瀬君が元気になったなら、今度は皆で回ろうよ」

「そうだな、そうするか」

「天ヶ瀬君もいいかな?」

「勿論、気を遣わせてしまったね」

「そんなのいいって、ねえ、観覧車に乗りに行こう? 遠くまで見えて楽しいよ」

「そうだな、理央、上の方に行くと海が見えるぞ」

「へえ」


そうと決まれば、と、食いかけのバーガーとポテトをバクバクッと食べて、ついでに理央のバーガーも俺の腹に収める。

薫には「意地汚い」なんて言われたが、呑気に食ってる場合じゃないからな。

今度は四人で、早速観覧車へ向かう。

また薫と虹川で乗るよう勧めてから、俺は理央と観覧車に乗り込んだ。

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