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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

气水

僕はコップに満たされた、赤紫にきらめく薬液を恍惚と眺めながら兄に告げた


「飲みますね…」



まずは僕が一口


効果はとても早く現れ始めた

僕の躰の表面は、薬液がそうであるように薄くきらきらと輝き始めた



実際には、躰を包んでいるのは粘液に近いものだ


躰組織が変異した物らしいけど、詳しくは解らない

多分これを使っている多くの人が、仕組みまではあまりよく解ってないと思う



「早く飲んで下さいよ…」


期待に潤んだ眼で兄にコップを渡す


兄が残りを口にする

喉の鳴る音

喉の膨らみが、音と共に動く



二人とも、規定量よりも多くを飲んだ


効果は少しして現れた

僕たちの躰は水になった



「兄さん」

境の無くなった躰で、僕たちは互いを抱き寄せ合う


「ずっと、こうなりたかったんですよ」



これから、僕たちの肉躰は物理的に一つのものになる


お互いの躰に溺れながら、お互いを少しでも多く飲み干そうと僕たちはその身を貪り合った

交わっているうちに頭同士が触れ合い、僕たちの脳はコーヒーとミルクのように混ざり合う

意識が物理的に結び付いて、兄の心が僕の躰に入り込んで来た


兄の心の世界に広がっていたのは僕への肉欲、独占欲、そして掛け値の無い愛だった



「こんなものが…」


「兄さんにも視えているんですか?」



少し恥ずかしかった


何故なら兄もまた、僕の心が視えている筈だから

答える代わりに兄は僕の躰を狂おしく吸った


躰の飲み込まれた部分が、喉を通り抜ける感触の中で躍っている

愛するものの躰に入っていく感覚の心地良さに、僕は声を上げてしまっていた


両手で口を塞ごうとしたが、いまの躰にとってそれは意味を成す行為では無かった

声は出なかったが、声の代わりに振動が、混ざり合った部分から総て兄に伝わってしまっていた



「溶け合ったまま」


「元の姿に戻ってしまいたいですね」


実際には摂取量から逆算すると、もう僕たちの躰は永遠に元に戻る事は無い



それで構わなかった


この姿にならなければ、こんなにも深い愛を感じる事は出来なかったと思う


兄が僕の両手を掴み、部屋の床に組み敷いていく

液躰音が反響し、直ぐに静かになった



掴まれた手の指も残らず溶け合って、僕たちは一つに混ざり合おうとしていた

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